ネコ問題について講演やパネルディスカッションが行われた
外来ネコ問題研究会(山田文雄会長)は30日、奄美市名瀬長浜町の奄美文化センターでシンポジウム「奄美の自然と〝島んちゅ〟の未来!!みんなで考えよう!ネコ問題とクロウサギ、そして世界自然遺産のこと!!」(全5回)の第3回「奄美大島の現状と課題、そしてその展望」を開いた。会場には一般や関係者など約70人が参加し、各講師から奄美大島のノネコ問題などの報告があり、世界自然遺産に向けた課題の認識を深めた。
シンポは、公益財団法人自然保護助成基金(PNF)の助成事業で実施。3月に1回目を徳之島町で、2回目を奄美市で開催して、講師陣からノネコの希少種の捕食やネコの放し飼いなどの問題が紹介されていた。
シンポで山田会長が司会を担当。講演の前に同研究会の活動を紹介して、外来ネコ問題(希少種の捕食、感染症の危険性など)を抱える離島は奄美大島、徳之島を含めて11地域になるとした。
最初の講演「第1、2回シンポジウムを振り返って」を、東京女子大学現代教養学部の石井信夫教授が発表。これまでのシンポからネコ問題について、ノネコ、ノラネコ、飼い猫の区別が難しいとして、行政が実施しているTNR事業を中途半端になってしまっては無意味として早急な対策を訴えた。
沖縄の西表島でノネコ問題に取り組んできた長嶺隆さん(NPO法人どうぶつたちの病院沖縄理事長)は、ノネコ問題は適正飼養を行えば解決できると提言。ネコ問題として放し飼いされているネコによる感染症を挙げて、マダニから伝染したノラネコに咬まれてSFTS(重症熱性血小板減少症候群)での死亡事例があったことを紹介。「ネコは外で飼うものという概念を変えなければならない」と語った。
神奈川大学法学部の諸坂左利准教授は、法学者の立場から6月に奄美大島5市町村の議会で議決された改正ネコ条例を解説。罰則規定が盛り込まれた今回の改正条例を高く評価する一方、世界自然遺産登録後の観光客対策を課題として入島税の導入や、地方創生金、ふるさと納税などを財源として対応するようアドバイスした。
奄美野生動物研究所の塩野崎和美さんは、奄美大島のノネコの生息数を600~1200頭と試算。ネコ条例の課題について、▽飼い猫条例の周知の不徹底▽多くの放し飼いネコ▽飼い猫の不妊化率の低さ―を示唆した。
休憩後にアンケートで参加者の質疑応答。次いで4人の講師陣に、山田会長とゆいの島どうぶつ病院の伊藤圭子院長も参加して、パネルディスカッションが行われた。
伊藤院長は、ネコ問題解決のためには「地道にやるしかない」と話し、「近頃は不妊手術に関心持つ人、猫に施術する人は増えた」と話した。ネコの適正飼養について諸坂准教授は飼い主の責任は社会に対する責任もあるとし、「公衆衛生上の責任を考えるとエサやりを全面禁止にすべき」と提案した。
収容施設の運用について、捕獲したネコの収容数でなくその収容期間がネックだと指摘。各地の施設の収容期間は平均一週間で最短は二日間と報告された。
条例の実効性についても議論があり、「(担当者で罰則の適用にばらつきが出るなど)飼い猫条例の空文化を防ぐため(粛々と実行するための)マニュアルを作成すべき」の意見も。31日は、徳之島町生涯学習センターで第4回シンポジウムが開かれる。