奄美ドクターヘリの救急輸送訓練
孤立住民の海上搬送訓練を行った(船は巡視艇かいもん)
「防災の日」(9月1日)を前に奄美大島では27日、3自治体(奄美市、瀬戸内町、宇検村)で津波を想定した防災訓練があった。奄美市では、警察や消防など関係機関は各種救助活動を実施。被害状況の共有や奄美海上保安部所属の巡視艇「かいもん」、奄美ドクターヘリの出動など大規模に展開した。また参加した自主防災組織の住民約2500人は高所避難や炊き出しを行い、防災意識の向上に努めた。
同市は、2010年の奄美豪雨、11年の東日本大震災を教訓に、関係機関と連携した合同防災訓練を毎年実施している。7回目の今回は、市民への防災無線による警報と避難指示を発令した情報伝達訓練。行政、消防、警察など実働機関は災害対策本部を設置し、対処時の連携を確認した。
午前9時、奄美大島近海を震源とする地震が発生。10~20分後、市内に津波が到着するとの設定で訓練は始まった。大津波警報の発令を受け、各地区住民は要介護者や高齢者を支えながら高台へ避難。その後、避難所を開設し、炊き出し訓練を行った。
メーン会場となった名瀬港観光船バースでは、実働機関の合同訓練として、▽ドローンによる被害調査▽漁船による物資輸送▽海上救助▽救急搬送―などを実施。昨年12月就航した奄美ドクヘリは、今回初参加。港内のランデブーポイント(場外離着陸場)で待機する救急車から搬送患者を収容した。
同市名瀬長浜町の「長浜中央自治会」(大迫勝史会長、約450世帯)は、孤立住民の海上搬送訓練に約20人が参加。海保職員の誘導に従い、「かいもん」に乗り込み。車いす利用者や傷病者の搬入作業も迅速に行った。
大迫会長は「地域を見守るネットワークを構築し、緊急時に対応が必要な住民を把握しておくことが重要だと感じた」と述べた。
訓練時、市内5カ所の避難所を視察した朝山毅市長は「地域で共助の輪をつくり、自ら安全を守ろうという機運が醸成されてきた」と総括。8月の台風5号など自然災害の多発傾向を踏まえ、「地域防災の自治、連携を促すためにも住民への情報伝達の重要性は高まっている」と話した。