朝仁千年松

朝仁千年松

今後伐採される「朝仁の千年松」をしのび、感謝会が開かれた

伐採前に住民が感謝会
「関わり深い神木」

 松枯れが深刻となっている、奄美市名瀬朝仁新町の樹齢400年とされているリュウキュウマツ「朝仁の千年松」(愛称)が今夏前に伐採されることが決まった。地域に親しまれてきた神木の姿を心に刻もうと、地域住民は13日、樹木の下で感謝会を開いて、千年松にまつわる思い出話に“花”を咲かせた。

 樹木は千年松公園の旧国道沿いにあり、神松木(カンマチゲ)として地域を見守ってきたまちのシンボル。旧名瀬市が保存樹第1号(1978年指定)に定めていたが、2013年夏ごろから松枯れの兆候が表れはじめたため、市当局は樹幹へ薬剤注入して拡大防止に努めてきたが枯れの進行は止まらなかった。

 市側は根腐れがみられるとして保全を断念。周辺に住宅地もあることから台風シーズン前の伐採を判断した。この措置を受け、朝仁町内会(428世帯850人、屋村賢良会長)は近隣自治会と協力して、神木への感謝会の開催を決定したという。

 屋村会長は「地域には神社がなく、これまで地域行事を担ってきた存在。住民の安全確保から伐採を承諾したが、新たな歴史の始まりとして、語り継いでいきたい」と話した。

 会には近隣住民や市職員など約120人が参加。町内会関係者が木のたもとに酒を注ぎ、参加者は全員で献杯。島唄による奉歌でにぎやかに営まれた。来賓に朝山毅市長も駆けつけ、「高校時代は遠足の道中の目印となった思い出の松」と名残を惜しんだ。

 同町の井川静男さん(81)は「この木は、出兵の見送りや十五夜祭の打ち出し、住民が酒を酌み交わした場所。その姿が見られなくなるのはとても残念」と感無量に話した。

 町内会関係者によると、幹の一部を残したモニュメントなどの設置を市側に要請。伐採後は資材としての活用も検討している。