大河ドラマの舞台裏や菊池源吾と名乗っていた西郷の史実などを講演した原口教授
奄美市名瀬の県立奄美図書館は26日、同館会議室で生涯学習講座「あまみならでは学舎」の開講式と第1回講座を開いた。「大河ドラマ『西郷どん』奄美編の舞台裏」のテーマで、ドラマの時代考証を担当した志學館大学の原口泉教授(県立図書館長)が講演した。奄美編の放送開始で関心も高く、座席や資料が足りなくなるほど多数が参加。講師からドラマ制作の裏話や、史実を交えた解説があり今後の見どころなどが語られた。
同講座は県民が潤いと活力ある地域社会の実現を目指すなどの目的で開催。今年度は農業、自然・環境、伝統工芸など全8講座を予定している。
原口さんは、原作とドラマの冒頭の相違点に言及。「林真理子さんの原作は息子の菊次郎の語りで始まるが、ドラマは上野の西郷の銅像除幕式でスタートした」と話した。
また働き方改革で、全50回予定のスケジュールが47回に短縮されたという。「奄美編より後は、入れられるエピソードは限られてくるだろう」。
原口さんは「ドラマ制作に時代考証として関与しているが、歴史ドキュメンタリーとヒューマンドラマは違う」と指摘。「無いものを無いとしたらドラマは成立しない」と脚色やフィクションがドラマには入っていることを説明。「『西郷どん』を見て子どもたちが、良い世の中にしようと考えてくれたら幸い」と語った。
ドラマでは今月13日放送分から奄美編に入ったが、菊池源吾と変名し龍郷の阿丹崎に上陸したのは史実に基づくものと紹介。「20日に放送された代官所への一揆のシーンは、犬田布騒動が頭にあったが創作の話」と明かした。
「愛加那がドラマで使用したギハ(かんざし)は、実物は銀製で、龍家が上流の家だったことを示すもの」と解説。「愛加那さんとの結婚は他の流人と違い、仲人を立て三献で行われた。島妻(アンゴ)ではなかった。愛という字は機織りの神様・愛染明王からとったのではないか」と話した。
奄美の世界自然遺産登録に関し、「延期勧告されたのは残念だったが、課題を修正し最短で20年の登録実現を目指して」と激励。19年3月末に期限切れとなる奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)について、「奄振法の延長を実現させ、自然を守ることを産業としないとならない」と提言した。
原口さんは、「世界自然遺産が登録となったら、徳之島で愛加那が子ども2人を連れて西郷がいた岡前まで歩いた約12㌔の道を『愛加那ロード』としてはどうか」「今後も徳之島や沖永良部が描かれるので、ドラマを楽しんでもらいたい」と語った。
講座に参加した大島高校2年の積風我さん(17)は、「歴史が好き。大河ドラマも見ているが、幕末が漠然としていたので参加した。講座は歴史の解説もあり参考になった。ドラマについては奄美編で方言に字幕が付いていたのが驚いた」と話した。
次回の講座は6月9日に、奄美の農業について龍郷町赤尾木でジェラート店を経営するいずみ農園の泉祐次郎代表が講演する。