「西郷隆盛と菊次郎」シンポ

「西郷隆盛と菊次郎」シンポ

シンポジウムで講演した松延さん(左)、大茂さん(中)、黒田さん(右)

龍郷町へ自治体交流の提言も
研究者ら講師、功績語る

 龍郷町の生涯学習講座「志塾・西郷塾」と㈱奄美有機農業研究所は27日、同町の生涯学習センターりゅうがく館で「西郷隆盛と菊次郎」シンポジウムを開いた。研究者などが講師となり、西郷隆盛と菊次郎の功績などが語られた。同町から町長らが6月に台湾・宜蘭県を表敬訪問することや、さつま町永野との交流の提言もあった。

 オープニングで、同塾生の手による紙芝居『菊次郎物語』の映像を上映。紙芝居では菊次郎が西郷と愛加那の長男として誕生し、2度の米国留学や台湾宜蘭庁長、京都市長など活躍した話が紹介された。

 開催地の龍郷町教育委員会から、碇山和宏教育長が歓迎のあいさつ。「大河ドラマで町には、多くの観光客が来て盛り上がっている。敗残兵として奄美に戻って来た菊次郎が、仁愛の政治家に生まれ変わるエネルギーをもらったのが奄美の地である。来月、町長とともに台湾宜蘭県と友好関係を築くために、表敬訪問する」などと話した。

 シンポジウムでは3人の講師が登壇。奄美滞在が西郷に与えた影響や、菊次郎の功績と奄美との関わりをテーマに講演が行われた。

 最初に歴史学者で元駿台予備校講師の松延康隆さんが「西郷菊次郎と奄美・台湾」と題して講話。「奄美は薩摩藩の苛政=かせい=で苦しんでいた。そのため差別と貧困とどう戦うかが菊次郎の生涯について回った」「菊次郎が台湾で敬天愛人の精神で善政を貫いたのは、大変困難であったと思う。一地方官の姿勢が、現在の台湾の親日感情につながっているのでないか」と語った。

 続いて地元から志塾・西郷塾の講師で町文化財保護審議委員の大茂卓郎さんが登壇。「西郷が奄美に与えた影響は、教育や学問の大切さを伝えたことだろう」「近代の自由・平等という新しい考え方を、みんなと一緒に考えたのが西郷さんだった」と話した。

 休憩をはさみ、永野金山100周年記念誌編集委員でさつま町文化財保護審議委員の黒田敏隆さんが「西郷菊次郎と永野金山」の演題で講演。さつま町の永野金山の歴史や概要などを説明した。

 「菊次郎の鉱業館長としての功績は、トロッコ道の木造橋を鉄橋に切り替えたことや、従業員の子弟などに夜学校を設けて教育を行ったこと」と解説。龍郷町の西郷関連の史跡にふれ、「いろいろな史跡があるのが分かった。さらなる活用をしてもらいたい。もったいないと感じた」「菊次郎を通して、龍郷町や熊本県菊池市、台湾宜蘭県とも交流が図れれば。それを実現するのが私の夢である」と語った。