基調講演を行った医療介護福祉政策研究フォーラムの中村理事長
奄美市名瀬地域包括支援センター(センター長・永田孝一市高齢者福祉課長)は22日、同市名瀬のAiAiひろばで「奄美市地域包括ケアシステム構築に係る多職種研修会」を開いた。講師の基調講演や事例に基づくグループワークを通して、国の社会保障制度改革の流れや地域共生社会づくりなどの見識を深めた。
地域包括ケアシステムに関わる医療や福祉などの職種から、約80人が参加。研修会は2部制で講師の基調講演と、事例に基づく多職種グループワークを実施した。
開会で永田センター長があいさつ。「地域包括ケアシステムという用語が使われ始めてから5~6年。なかなか形になっていない。みなさんの協力と支援により、いつまでも安心して暮らせる奄美市をつくりたい」と話した。
基調講演の講師を?医療介護福祉政策研究フォーラムの中村修一理事長が担当。「地域包括ケアシステム:これまでとこれから」と題して、講師が厚生労働省時代に関わった社会保障改革やこれからの地域共生社会づくりなどを説明した。
講師は「地域包括ケアの原点は、2000年の介護保険法施行」と指摘。介護保険の導入後は施設偏重で在宅サービスの脆弱=ぜいじゃく=性という問題があり、05年の介護保険法の改正で地域包括支援センターが制度化されたという。
「地域共生社会はまちづくりが必要とされ、福祉はまちづくりそのもの。地域でのつながりが重要で、地域包括ケアはそのための手段」と解説。地域包括ケアシステムの構築に、▽生活重視の視点▽ネットワークづくり▽「自助、共助、公助」と「互助」▽制度横断的、総合的アプローチ―が求められるとした。
40年度には社会保障給付費が18年度の1・56倍となる190兆円(対GDP比24%)に達する見込みとし、「健康寿命を延ばして全世代対応の社会保険制度や年齢別の負担から、負担能力に応じた負担へかえていくことなどが必要だろう」と締めくくった。
休憩をはさんで参加者は6グループに分かれて、配布資料のケーススタディに基づいてリハビリや福祉用具の活用などを検討した。グループワークのファシリテーターを在宅医療連携支援センターの冨川利香さんが担当した。
模擬事例について、各グループで多職種連携の在宅支援を検討。検討の後に、2グループが「日常につながるリハビリを行う」や「近所の人の支援も大切でないか」などの意見を発表した。
同センターは、地域包括ケアシステムが質の高いものになるよう10、11月に事例検討会を行う予定。