環境文化考えるシンポ

環境文化考えるシンポ

シマ(集落)の環境文化を考え伝統行事のこれからなどを移住者や地元住民が意見を交わした

 
 
伝統絶やさず次の世代へ
「結のある温かい集落に」
大和村で事例発表や意見交換

 

 鹿児島大学環境学研究会は環境省那覇自然環境事務所、鹿児島県と共催で12日、大和村思勝の同村防災センターで「シマのくらし(環境文化)を考えるシンポジウム」を開いた。環境文化を生かした活動に取り組む集落住民や一般などが参加し、事例発表やパネルディスカッションを通して、シマ(集落)の価値を再発見し次世代にどうつないでいくかなど活発な意見が交わされた

 シンポ冒頭に同大の髙松英夫研究担当理事や、同事務所の東岡礼治所長(代読)と県自然保護課の羽井佐幸宏課長があいさつ。同会の小栗有子准教授が、コーディネーターとなり司会進行した。

 第1部は「シマの環境文化を知る・共有する」と題して、秋名(龍郷町)、国直(大和村)、市(奄美市住用町)の集落散策をスライドで紹介。各集落を巡った感想や共通点などが、集落散策の参加者から語られた。

 市集落の山下茂一区長は、秋名散策を体験した感想を発表。「共通するのは地形が似ているところ。休耕田に野鳥が多く見られ、地域住民と共存していると実感。婦人会や壮年団などの協力体制がしっかりしているのが相違点」と話した。

 第2部の「シマの伝統行事のこれから」では、シマのくらしと伝統行事のつながりについて各集落の住民が意見を述べた。伝統行事を未来に引き継ぐために同市住用町見里集落の川畑安英さんは、「伝統行事は神への関わり強い。旧暦に基づいたお盆の行事は変えてはならない」と語った。住用八月踊り保存会の師玉当太さんは「今後につないで行くために、引き継がれてきたことをしっかりやり後輩に伝えながら活動したい」と話した。

 あまみエフエムの麓憲吾理事長は、市街地に住む側の視点で発言。「各集落が自然と文化に向き合い、バランスを保ちながら暮らしている。不安と課題を共有し、自然の揺らぎ、動植物の生命の限りの中で生きているのが素晴らしい」「シマのくらしの面白い、楽しい、かっこいいを伝える。形を変えて伝えていくことも大事でないか」などと語った。

 第3部は「移住者×地元で『シマの価値』再発見」のテーマで、集落活動を支える「活動人口」と「集落組織」について移住者と地元側の意見交換。司会進行が同大の小栗准教授から、星野一昭特任教授に引き継がれた。

 龍郷町幾里集落に移住した藤井菊美さんは、マコモに出会い田んぼや家が無料で借りられる支援が決め手となり移住。藤井さんはマコモを栽培し、使われていなかった葉っぱをお茶に加工するなど商品化。秋名集落の隈元巳子区長は「青年団が八月踊りの伝承に取り組んでいる。自分たちは自然の中にいるのが当たり前で、藤井さんにより新しいマコモの活用法に気付かせてもらった。移住者の悩みを聞くなど、結=ゆい=のある温かい集落にして行きたい」と話した。

 原木洋子さん夫妻は、原発のない所での暮らしを考えて広島から同市住用町和瀬に移住。「海のそばや大自然の中で暮らしたかった。自然の中で暮らせるのが利点。インターネット環境あるので、翻訳の仕事をしている」と述べた。