「琉球石垣」町文化財に

「琉球石垣」町文化財に

琉球石垣の隅角部の実測を行う沖縄国際大学の宮城さん

龍郷町教委 27年ぶりの指定
沖国大研究者が実地調査 沖縄の史跡と比較

 龍郷町教育委員会(碇山和宏教育長)はこのほど、町文化財保護審議委員会の答申を受け同町秋名の琉球石垣を町文化財に指定した。新規の文化財指定は1992年以来、27年ぶりとなる。11日は沖縄国際大学の研究者が現地で調査を行い、沖縄の史跡等との相違点などを確認した。

 同町によると、琉球石垣は秋名里の西側の山すそに暮らしていた1852年(嘉永5)生まれの豪農・麻福栄志(士族格)の屋敷に築かれた物。サンゴ石垣は琉球から石工を呼んで、家人=やんちゅ=を使って近くの海からサンゴ石を集めさせて建築されたという。

 サンゴ石垣は全長約69・5㍍、幅約1・3㍍、高さ約3・1㍍。石垣の積み方は相方積み(別名・亀甲乱れ積み)で、石の大きさや形は不揃いだが互いにかみ合うように積んでいるのが特徴。この石積みは、15世紀初期に琉球で工夫された琉球独特のもので、奄美が薩摩藩に支配されていた時代(大和世)に奄美の豪農が琉球と貿易をしていたことを物語る貴重な文化財として高く評価されていた。

 町教委は文化財指定に向け今年1月、町文化財保護審議委員会(當田嶺男会長)に町指定が妥当かを諮問。同委員会が1月24日開催の2018年度第2回町文化財保護審議会で、琉球石垣の町指定を協議し文化財指定が妥当であることを町教委に答申していた。

 町教委は、2月13日付で町の有形文化財(建造物)に指定。今回の指定で町の文化財は、8件(建造物3件、名勝天然記念物2件、史跡1件、記念物1件、無形民俗文化財1件)となる。

 この日調査に当たったのは、前日の奄美大島調査報告会で発表した沖縄国際大学社会文化学科長の宮城弘樹講師。宮城さんは考古学者で、貝塚時代やグスク時代、貿易陶磁などが研究分野でグスクの土木技術にも詳しい。

 現在の管理者・伊東廣美さん(69)によると琉球石垣は、戦前には伊東さんの夫の両親の隆正さん・菊江さん夫妻が前所有者から購入して住んでいたが詳しい経緯は不明。宮城さんは伊東さんや町教委の川元美咲学芸員に琉球石垣の由来など聞いて、簡易な調査や実測を行った。

 宮城さんは、沖縄の「中城御殿=なかぐすくうどぅん=」などとの類似点を指摘。「日本の城郭のように石垣は反り返らず直立している点や、サンゴ石を扇形にして組みこんでいるなどが共通」「隅角部は沖縄のグスクなどは丸くコーナーが形成されるが、伊東家の琉球石垣は面取りしている点が相違点。19世紀の建造物とみて妥当。保存状態も良く、指定をきっかけに今後も適切な管理をしてもらえれば」と語った。

 川元さんは「これからも指定されていない文化財の掘り起こしに、調査して価値付けし町のブランディングの一助になれば」と話した。
伊東さんは「指定されたので多くの人に見てもらい、大事にしていきたい」と述べた。