奄美大島南部のウケユリ自生地で確認された盗掘とみられる痕跡
奄美大島南部の山中で絶滅危惧植物ウケユリが盗掘されたとみられる案件が27日に発生。28日は、環境省や関係機関が立ち会い現地で穴が掘られた痕跡を確認した。関係者は開花期を前に起きたことを重視し、パトロール強化など警戒を強める考えだ。同種は2017年6月に奄美大島の山中で、切り株を残して球根だけが持ち去られる被害も出ている。
ウケユリは奄美大島南部、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島に分布するユリ科の多年草。環境省の絶滅危惧ⅠA類にリストアップされていて、園芸目的の採取などで盗掘被害に遭うことが多いという。
奄美大島5市町村でつくる奄美大島自然保護協議会のパトロール員が27日午後、山中にある同種の自生地で痕跡を発見。発見者は同日夕方に同じパトロール員で植物研究家の山下弘さんに報告し、28日午前中に環境省や県大島支庁、奄美市、大和村などの関係者が穴の掘られていた地点を確認した。
現地は奄美群島国立公園の特別保護地区内に入っていて、植物の採取など現状変更行為は原則として認められない。山下さんは住民に対する普及啓発を求め、「前回の盗掘は切り取られた茎などが残っていたが、今回は盗掘と断定できないものの、盗掘だったら分かりにくい場所を狙うなど巧妙になってきているのでないか」「住民に奄美の宝であるという認識不足だろう。貴重な植物があり、保護が大事であるという啓発活動が必要」などと語った。
山下さんたちは主に平日をパトロールしている。今回の件を受け、「もうすぐ開花時期になるので、頻繁に巡回して警戒したい」。また同地も含め奄美大島では、盗掘被害などでウケユリが減少傾向にあるとした。
環境省奄美群島国立公園管理事務所の千葉康人世界自然遺産調整専門官は、穴の開いた痕跡を盗掘とする断定を避けながら、「盗掘ならもっと深く掘るかもしれない。監視体制を強化しているところであり、6月には環境省の事業で休日にパトロール活動を開始する予定で、自然保護協議会のパトロールと連携して違法採集(盗掘・盗採)の未然防止を図れれば」と話した。