【4回戦・大島―鹿児島南】最後の打者を中飛で打ち取り、笑顔でハイタッチを交わす大島・藤崎(右)=平和リース
【鹿児島】第101回全国高校野球選手権鹿児島大会第11日は20日、鹿児島市の平和リース、鴨池市民の両球場で4回戦4試合があった。
奄美勢は大島が鹿児島南と対戦。終盤追いつかれる苦しい展開だったが延長十回に勝ち越し、苦闘を制して17年以来2年ぶりの8強入りを勝ち取った。
第12日は21日、両球場で4回戦4試合がある。奄美勢の対戦は組まれていない。
【評】大島は二回表、二死から4連続四球押出しと暴投で2点を先取。四回は暴投、五回は6番・東の犠飛でリードを広げるも、五回裏に2点を返され、1点差に詰め寄られる。六回表、二死から好機を作り、2番・赤崎の右翼線二塁打で2点差としたが、八回裏、二死満塁から2点適時打を浴びて同点に追いつかれた。九回で決着がつかず延長戦へ。大島は十回表、一死から内野安打で出塁した8番・藤本が二盗を決め、1番・國塚の左前適時打で再び勝ち越す。その裏、九回から4番手でマウンドに上がった藤崎が踏ん張り、2時間48分の苦闘を制した。
【4回戦・大島―鹿児島南】延長10回表大島二死二塁、1番・國塚の左前適時打で二走・藤本が生還、6―5と勝ち越す=平和リース
終盤劣勢の展開だったが、大島は「やれるプレーをやり切る」(塗木哲哉監督)強気な姿勢で勝利を手繰り寄せた。
相手は鹿児島南。昨夏も同じ4回戦で負けた相手であり、今大会3回戦でシード鹿児島商に勝った。序盤、相手のミスで先制し、リードする展開だったが「『夏の南』の強さを肌で感じ、選手たちが地に足のつかない感じだった」(塗木監督)。
八回裏、二死満塁から適時打を浴び、同点に追いつかれる。打ったのは好リリーフを見せていた2番手・杉山。序盤の劣勢を覆し、逆転サヨナラ勝ちへの流れが相手にあるのは明らかだった。
九回裏、先頭打者を出し、二死二塁。藤崎―今里のバッテリーは、2安打2打点と当たっている4番・臼井を迎えた。歩かせて5番勝負か迷うところだったが、外角低め厳しいところを2球続けてストライクだったことで、今里武之介は「勝負」を選択する。イチかバチかの賭けだったが「思い切った方が悔いも残らない」と内角スライダーで3球勝負。見事一ゴロに打ち取ってピンチを脱し、勝機を引き戻した。
直後の十回、内野安打で出塁した8番・藤本涼也は果敢に二盗を成功させる。「自分の判断で走れ」のサインに対し変化球が来ると読んだ2球目に走った。この試合、守備も打撃もフル回転で活躍していた1番・國塚が左前適時打を放つ。浅い打球だったが「打った瞬間から走った。周りの声も何も聞こえなかった」と二走・藤本が好走塁で勝ち越しのホームに滑り込んだ。
開幕から2週間。苦しい試合が続きながらも「粘り強さ」を発揮して2年ぶりの8強入り。「大会を通してどんどん選手が成長している」と塗木監督は感じている。今まで培った力プラス、今大会の「伸びしろ」を、準々決勝では第1シード神村学園相手に思う存分ぶつけるつもりだ。
(政純一郎)
「相手の投手は何球投げている?」
四回表、攻撃前の円陣を組んでいるときに、塗木哲哉監督が尋ねた。
「72球です」
スコアブックを見て即答した。チームに必要な情報をすぐ伝えられるように、試合の流れを把握するのも、スコアラーとしてベンチに入っているマネジャーの大切な仕事だ。
父も兄も大高野球部の野球一家。中学ではバレーボールをしていたが、高校で女子マネジャーになるのは必然の流れだった。
スコアブックがちゃんと付けられるようになったのは1年の秋頃。野球経験もあり、守備位置や基本的なルールは分かっているつもりだったが、実際につけてみると「ルールが複雑で難しかった」。奥裕史コーチが丁寧に教えてくれたおかげで、今ではどんな状況にも対応できるようになった。
「選手と同じ気持ちでいる」ために、試合中は基本立ったままでスコアをつける。夢中になると「つい前のめりになる」。苦しい試合でも雰囲気を盛り上げるように声を出し、笑顔でいることを心掛けている。
鹿児島南戦は本当に苦しかったが、冷静にスコアをつけ、最後の打者を中飛で打ち取ったところまでちゃんと書いた。勝利の興奮に我を忘れることもなく、最後のあいさつまできっちりやり切った。
「これからも選手と同じ気持ちでチーム一丸となって戦う」。この夏掲げた夢は、もちろん選手と同じ「甲子園出場」だ。
(政純一郎)