希少ヌマエビ類3種発見

与論町那間地区の洞窟で発見された希少ヌマエビ3種(上からチカヌマエビ、アシナガヌマエビ、クラヤミヌマエビ(仮称))=藤田喜久さんら「琉球列島与論島における地下水性ヌマエビ類3種の記録」より引用

鹿大など研究グループ
与論町の洞窟 分布北限更新も 「アンキアライン」の資源豊かさ示す成果

 鹿児島大学・沖縄県立芸術大学・琉球大学による研究チームは、与論町那間地区の洞窟の地下水面から希少ヌマエビ類3種が発見されたことを、9月3日付発行の日本甲殻類学会の和文雑誌『Cancer(キャンサー)』で発表した。研究に携わった鹿児島大の鈴木廣志名誉教授は「『アンキアライン環境』における潜在的な資源の豊かさを示す良い成果」としている。

 同研究チームは2017年5月と19年3月に同町那間の洞窟で調査を実施。調査により洞窟内の地下水域が、潮の干満で水位が変動することが確認され、地下で海とつながり、海水と淡水が混じる汽水域「アンキアライン環境」であることも分かった。

 新たに発見されたのはチカヌマエビ、アシナガヌマエビ、クラヤミヌマエビ(仮称)の3種。いずれも与論島では初めての発見。このうちチカヌマエビはこれまで、国内では沖縄県でのみ発見されていた種。環境省レッドリスト(RL)では「準絶滅危惧(NT)」、沖縄県レッドデータブック(RDB)では「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」とされている。

 またクラヤミヌマエビは、これまで宮古島でしか発見されておらず沖縄県RDBでも「情報不足(DD)」として評価されている。3種の標本はいずれも琉球大学博物館(風樹館)に収蔵された。

 同チームはキャンサー掲載記事で、チカヌマエビについて「(与論島が)世界的な分布北限となることから、今後、鹿児島県においても保全策を検討する必要がある」。クラヤミヌマエビについては「今後、宮古島および与論島の標本を用いた記載分類学的研究および分子遺伝学的研究の進展が期待される」としている。

 鈴木名誉教授は「沖縄県では調査が進んでいるが、トカラ列島や奄美群島の隆起サンゴ礁の島にもアンキアラインが多い。地元の人と情報交換、協力体制を作り、人目に付かない特別な環境での新たな発見を進めたい」と話した。