湯湾岳登山口で環境省職員らから説明を受けるウルリーカ氏(左)とウェンディー氏(左から3人目)
IUCN(国際自然保護連合)は9日、奄美大島の世界自然遺産候補地の湯湾岳山頂周辺などで登録に向けた現地調査を行った。IUCNの専門家2人が来島し、環境省職員や専門家、関係者など約20人が同行して亜熱帯照葉樹林を視察。2人は同省職員や専門家から外来種対策などの説明を受け調査し、世界遺産委員会に結果が報告される。地元関係者らは2年ぶりとなる現地調査を肯定し、どういう判断が下されるか注目するなどの声が聞かれた。
公式初来島したのはIUCN専門家で自然全般の知識を有するウェンディー・アン・ストラーム氏(スイス)と、IUCN世界遺産部門職員で淡水保全、復元などの分野で長年の経験を持つウルリーカ・オーバリ氏(スウェーデン)。両氏は8日夕、徳之島から空路で奄美大島入りした。
現地は奄美群島国立公園の特別保護地区で、推薦地のコアゾーン。大和村側の湯湾岳登山口で、同省奄美群島国立公園管理事務所の千葉康人世界自然遺産調整専門官と世界自然遺産候補地科学委員会の米田健副委員長(鹿児島大学名誉教授)が、IUCNから派遣された両氏に通訳を介したりして貴重な動植物が生息する湯湾岳の特徴や、雲霧林における植生の特徴などを英語で紹介した。
現地調査は10日午前中までで、その後、沖縄県に移動して11日から西表島の調査に入る。奄美大島では民間団体や地元関係者との意見交換も予定。
NPO法人「奄美野鳥の会」の鳥飼久裕会長は今回の調査について、「奄美の自然は個人的にみても十分評価できるもの。外来種や密猟への対策、オーバーユースの問題などの課題には手を打っているので、調査員がどう判断するかというところ。前回、登録延期という厳しい現実を突きつけられた後、国・県・奄美が取り組んできたことが評価されるため注目している」と話した。
奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長は、現地調査を肯定し、「IUCNから指摘を受けた課題に対する1年半の努力をありのまま見てもらいたい。オーバーユースが良くないので、しっかりとしたエコツアーガイドを行うことで守っていきたい」と語った。