3分野講演「喜界の未来考える」

サンゴ調査による過去の環境変化の解明を講演した渡邊さん

サンゴや地質調査 環境変動や変化解明へ
鹿大島嶼研シンポ、初の出張開催

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センターは12日、喜界町役場研修室でシンポジウム「新たな技術で喜界島の未来を考える」を開いた。同島に関係する3分野を講演。地域資源や産業を活用した島の将来について、参加者が意見を交わした。

 同センターは2015年に奄美分室=奄美市=を設置。奄美群島の遺跡や伝統文化、産業などの分野で年1回程度シンポジウムを開いてきた。今回は奄美大島以外で初めての開催で、同分室との中継も行われた。

 この日は同町内外から研究者や住民など約40人が参加。河合渓センター長は「地域還元の一環として、新しい研究や技術の取り組みに触れてもらえたら」とあいさつした。

 喜界島サンゴ礁科学研究所理事長の渡邊剛さんは「サンゴが語る喜界島の記憶」を講演。同島沿岸のサンゴや隆起する地域地形の特性を研究する立場で、過去の環境変化が分かる可能性を挙げた。

 サンゴ群落周辺の海域の地質に刻まれたデータの重要性を踏まえ、渡邊理事長は「ここは12万年の間にサンゴでつくられた島。サンゴや地質を調べることで、地球規模の環境変動や変化の解明につながる。ひいては島の未来を知ることになる」と結んだ。

 九州大学浅海底フロンティア研究センター長の菅浩伸さんは、「最先端の浅海底地形図づくりとその活用」と題し、マルチビーム測深技術を活用した海底調査の有用性を語った。

 沖縄県石垣島での実証調査でサンゴ群集の発見につながった成果を解説。海底地形の可視化に対する意義を訴える菅さん。「発見により、見えなかったものが見えてくることで、過去の時代の生活環境を明らかにすることができる」と強調した。

 そのほか、鹿児島大学農学部准教授の神田英司さんは「さとうきび農業スマート化のための衛星リモートセンシング」で効率化に向けた農業の在り方を提言した。