市議選振り返る

市議選振り返る

選挙期間中、有権者に支持を呼び掛けた候補者

過去最低投票率 有権者の心に届く活動を
得票、議員への期待と評価
市選管ミス目立つ

27日に投開票された奄美市議会議員選挙(定数22)により、今後4年間、市民の代表として「郡都」奄美市の発展を担う新市議22人が誕生した。選挙期間中、市内を駆け巡り、市政の課題や自らの政策を訴えた候補者たち。しかし、投票率は過去最低を更新、市議会に対する関心の低さを示す結果となった。候補者の声は、市民に届いたのだろうか。選挙戦を振り返る。

今回の市議選には現職17人、新人7人が立候補した。現職にとっては、4年間の活動の評価が今回の結果とも言える。17人全員が当選を果たしたが、前回から得票を伸ばした候補、逆に減らした候補もいる。

4年前は現職を応援したが、今回、初めて新人候補の応援にまわったという有権者の男性(65)は「地域の声をもっと行政に届けてもらいたかったが、4年間何も変わらず、新しい人に期待することにした」と話した。当選を喜ぶだけでなく、4年間の実績に対する市民の評価をしっかりと受け止め、今後の活動に生かす姿勢が求められる。

7人の現職勇退を受け、7人の新人が立候補、うち5人が当選し、新旧交代が進んだ。現職を押さえ上位当選した新人候補も多く、有権者の期待値の大きさがうかがえる。今後は、支援した有権者の期待に応えられるか、その働きぶりが、4年後に評価されることになる。上位当選者ほど、その期待の大きさに比例し、評価の目も厳しくなってくる。
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 今回の選挙戦で、最も注目したのはやはり、低下に歯止めのかからなかった投票率だろう。合併後、4回目の市議選の投票率はついに70%を割り込み、66・57%と過去最低となった。定数が2削減されたこともあり、少数激戦となったが、選挙に対する市民の関心は高まらなかった。

「政策の違いがなく、応援したい人がいない」、「選挙の時しか顔が見えない」、「当選後、何をしているのかよくわからず、誰がなっても同じように感じる」など、選挙期間中、市議会に対する有権者の厳しい意見も多く耳にした。

そんな中、今回も存在感を示したのは、3回連続でトップ当選を果たした安田壮平氏(40)だ。東大卒、松下政経塾出身というブランド力を生かし、毎回、3000票を超える得票で他候補を圧倒してきた安田氏だが、選挙前には「選挙への市民の関心が薄れている。前回、前々回のような得票は難しいのでは」という声も一部で聞かれた。

しかし、ふたを開けてみれば、過去2回の得票を上回る3541票を獲得、投票率が下がるなか、4年前から379票を上積みした実績は、大きく評価される。

選挙期間中、安田氏を支持する女性(51)は「初当選からずっと一貫して、市民目線で活動を続けている。選挙の時しか姿が見えない他候補とは違う」と語るなど、日頃から市街地などで辻立ちし、チラシやSNSなどで政策などを示してきた安田氏の地道な活動を評価した。

安田氏の得票は、「顔の見える活動」を続けることで、有権者の支持を得られることを示したと言え、政治離れによる投票率低下の対策としても注目される。4年に1回の選挙期間だけの呼び掛けは、有権者の心には響かない。日頃から有権者、市民を意識し活動を続けることでしか、市議会に対する市民の関心を高めることはできない。
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今回の選挙は市選管のミスも目立った。選挙公報では、期日前投票の投票時間を間違え、自民党公認候補を無所属と誤記載するミスもあった。さらに、開票作業では投票者数の報告に誤りがあり、実際の投票者数(投票用紙)が、記録上の投票数より132人多くなるトラブルもあった。開票結果の確定は予定より1時間以上遅れ、当選者が確定できず候補者や有権者にも迷惑をかけてしまった。

市選管の説明によると、いずれも単純なチェックミスだったが、「初めてのケースで、間違いを見落としてしまった。今後はチェック体制を強化し、同じミスが起きないよう徹底したい」としている。同様のミスが起きないよう、チェック体制を強化するのは当然だが、ほかにも、ミスが起きる可能性はないのか、すべての事務作業について、体制に問題がないか検証してもらいたい。(赤井孝和)