県20年度当初予算案・世界自然遺産関係

希少野生動植物の盗掘・盗採と不法な持ち出しを防ぐ目的で行われた研修会(19年7月、奄美空港)、新年度県予算案でICTを活用した対策が盛り込まれている

新たにICT活用し密猟対策
希少動植物の保全と機運醸成

 県は12日、2020年度当初予算案を発表した。今夏に登録の可否が審査される奄美の世界自然遺産登録に向け、推薦地の希少動植物を保全する事業や機運醸成を図る取り組みを行う。また新規事業ではICTを活用した密猟等対策や、生物多様性保全を図るため県民の取り組みを促進させる事業などを実施する。

 世界自然遺産登録に向け、▽画像認識AIを活用した希少種の密猟・盗掘対策▽自然環境に配慮した公共事業の推進▽世界遺産委員会パブリックビューイング▽世界自然遺産奄美トレイルの推進▽「奄美自然観察の森」(龍郷町)を魅力ある自然体験施設として再整備▽二つの世界自然遺産(屋久島・奄美)の周遊の促進▽奄美と沖縄の子どもたちの次世代継承交流▽県内外における情報の発信―などが主な取り組みとなる。

 事業費として、自然環境の保全と利用の両立に必要な取り組みに世界自然遺産「奄美」保全・活用事業費1億3575万4千円(奄美世界自然遺産登録推進室)。奄美自然観察の森整備事業費8640万円(同)、画像認識AIを活用した奄美大島及び徳之島の希少種の密猟・盗掘対策に取り組む新規事業として「生態系保全のためのICTを活用した密猟等対策事業」647万9千円(自然保護課)、生物多様性の保全を図る目的で県民自らの取り組みなどを一層促進させる新規事業の「未来へつなごう鹿児島の生物多様性推進事業」361万6千円(同)を計上している。

 県自然保護課の羽井佐幸宏課長は「奄美大島や徳之島に生息する希少野生動植物の不法持ち出しなどに迅速に対応するため、民間企業が開発した画像認識AIのプロトタイプに県の条例指定種の画像データを収集して取り込み運用を図りたい。空港での画像認識AIの運用を想定している」と説明。新規事業の生物多様性推進事業については「地域住民や団体などの生物多様性の普及啓発に関する草の根的活動を支援したり、県条例指定種の保全を図る活動、博物館や大学などと生物多様性の知見を共有して連携できる態勢を強化したい」と語った。