9月、セイタカアワダチソウなどの外来植物を駆除する参加者たち
【世界自然遺産登録】
4月14日、ユネスコ(国連教育・科学・文化機関)は、6月29日~7月9日に中国・福州で開催予定だった第44回世界遺産委員会の延期を決めた。新型コロナウイルスの感染拡大によるもの。同委員会で「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録はここで審査される予定だった。「新たな日程は検討中」とされ、例年委員会の6週間前までに行われるユネスコの諮問機関IUCN(国際自然保護連合)の勧告も先送りとなった。
11月、ユネスコは延期していた世界遺産委員会を21年6~7月に中国で開催することを決定。これにより、21年5月ごろIUCNは最終的な評価をとりまとめ、世界遺産委員会に勧告する見込み。それを踏まえて6~7月に中国福建省の福州で開催される第44回世界遺産委員会で、登録の可否が審査されることになった。
登録審査時期が不透明な状態が続いたが、その間も登録に向けての準備は各地で進んだ。
1月、徳之島町手々と天城町与名間の農道や林道でアマミノクロウサギとケナガネズミ計4匹の死骸が見つかり、死因はネコによるものと発表された。1~2月、飼い猫の適正飼養を促進するための飼い猫へのマイクロチップ無料装着会が開かれ、その後飼い猫条例の周知なども行われた。10月にはノネコ管理計画のロードマップが策定され、奄美市名瀬有屋町では外ネコ調査が行われた。
9月、奄美市住用町役勝で環境省、同市、住民との協働による外来植物駆除が行われた。学校や地域、企業や団体など住民参加型の外来植物駆除活動が各地で行われ、多くの住民が参加した。
9月、龍郷町安木屋場の県道でアマミノクロウサギの死骸が見つかり、10月、徳之島轟木の県道でも発見された。アマミノクロウサギやケナガネズミなどの希少種が交通事故に遭い死亡するロードキルは増加傾向にある。環境省はパトロールを行ったり、注意を呼び掛ける看板を設置したり、9~11月までキャンペーンを行うなどした。
5月に2度、宇検村の林道沿いで県の「指定希少野生動植物」に指定されているカクチョウランの被害が発見された。10月には瀬戸内町加計呂麻島で国立公園の特別地域内に昆虫のトラップが複数見つかった。希少種の盗掘・盗採は後を絶たない。空港から生き物の持ち出しの問い合わせも多いという。環境省は関係機関と連携してパトロールを強化、奄美大島自然保護協議会は、奄美大島・加計呂麻島・請島各所にセンサーカメラや看板を設置した。
2月、来訪者の増加を視野に、湯湾岳の利用ルール案の検討を開始。11月には奄美市住用町の三太郎線でナイトツアー実証実験を実施。持続可能なルールの模索が続いている。
【共生へ】
10月、徳之島地区自然保護協議会は、アマミノクロウサギとタンカン農家との共生取り組みのストーリーを紹介したミニ絵本『なかよしのしるし』を製作。
【文化財】
1月、鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの高宮広土教授が、龍郷町赤尾木の半川遺跡が琉球列島で土器を利用する「最古(約1万1400年前)の開地遺跡」であると報告した。
7月、天城町当局や教育委員会は、日本最大級とされる水中鍾乳洞「陸の中の海『ウンブギ』」(同町浅間)で回収したウンブギ土器が1万1700年~7400年前の縄文時代相当期に製作されたと考えられると発表した。
9月、龍郷町秋名で400年以上の歴史を誇る重要無形民俗文化財「平瀬マンカイ」が、新型コロナウイルス感染拡大防止のため集落外の観客を入れない形で行われた。「ショチョガマ」は中止となった。
11月、国の文化審議会は、喜界町の城久遺跡群について、1万1614平方㍍を国指定文化財に追加指定するよう文部科学相に答申した。
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自然や文化も新型コロナウイルス感染症に振り回された1年となった。延期になった沖縄・奄美の世界自然遺産登録は、来年5月ごろにIUCNがどういう勧告を行うか注目される。そして貴重な自然を守りながら観光などの地域振興をどう行うか。自然との共生、持続可能な工夫がより一層求められる。
(藤浦芳江)