奄美島豚ブランド確立シンポ

シンポジウムで基調講演をする下桐猛氏

「明確な定義・基準必要」
遺伝子学的特徴「ヨーロッパ種に近い」

奄美在来起源種の貴重な固有種である「奄美島豚」ブランド確立に向けたシンポジウムが11日夜、奄美市名瀬のAiAiひろばであった。生産者有志代表の原口洋一さんの企画、奄美島豚生産者や関係行政機関など約15人が参加した。「遺伝子利用によるブランド化には、奄美島豚の明確な定義・基準が必要」と提起。奄美独自の地域資源や文化資源と、経済活動を主軸とした資源の両方の価値観を尊重しバランスのあるブランド化の確立が必要とした。

同シンポは、これまでも保存の動きのあった奄美島豚が年々減少する中、世界自然遺産登録の時節を生かし、専門家の意見を参考に奄美島豚のブランド化の確立を探るのが目的。基調講演は、「奄美島豚遺伝子解析とブランド化に向けての遺伝子検査の利用」の演目で鹿児島大学農学部准教授・下桐猛氏、「奄美島豚ブランド化への提言」の演目で生産法人㈲今帰仁アグー代表・高田勝氏の2人が登壇した。

下桐氏は、ブタのミトコンドリアDNA変異はアジア系とヨーロッパ系の二つに区分できるとした上で、奄美島豚の18頭(霧島市9頭、鹿児島市4頭、徳之島5頭)からDNA配列を調査解析(2006年)。アジア系の中国産ヨークシブラックピッグ、ヨーロッパ系のランドレースの配列が最も一致し、両方の血が混じっていると報告。グループは異なるが、外見や毛色の似たヨーロッパ系バークシャとも差異は少ないとした。

また、「常染色体の遺伝子型からみた奄美島豚の遺伝子学的特徴も、アジア種よりバークシャなどのヨーロッパ種に近い位置づけになる」と述べた。

明治後期、奄美の在来豚にバークシャ種を導入。その後様々なヨーロッパ系品種やアジア系を導入し、「経済性の高い大型豚への置き換えを繰り返して1975年、島豚は消滅したとされた」と、島豚の改良(雑種化)と消滅の歴史を振り返った。その後1983年、奄美出身の基俊太郎氏が島豚の血を引く子豚を埼玉県秩父市で保存、生産された。

下桐氏は奄美島豚のブランド化のヒントとして「優秀な遺伝子を見つけ、DNA変異を用いた新品種・系統の造成と固定。それを集団内で固定すること」と提言した。