サンゴ2種が一斉産卵

無数の淡いピンク色をした新しい命が海に広がった(写真はキクハナガサミドリイシ)=21日午後11時頃、興克樹さん撮影=

龍郷町倉崎海岸 新しい命が広がる

 奄美海洋生物研究会会長の興克樹さん(53)が21日午後11時頃、龍郷町倉崎海岸の沖合でサンゴ2種の一斉産卵をカメラに収めた。無数の淡いピンク色をした新しい命たちが奄美の海に広がった。

 一斉産卵は、例年より少し早く、同日午後11時頃から同町倉崎海岸の沖合20㍍、水深2・5㍍の地点で約30分続いたという。産卵したサンゴは、ハナガサミドリイシ、キクハナガサミドリイシなどミドリイシ属の2種類。「バンドル」という淡いピンク色をしたカプセルの浮遊を観察したもので、興さんによると「バンドルが回りながら海中に飛び出していく姿はすばらしい」と感動的という。

 奄美大島のサンゴは、1998年の白化現象、2000~08年にオニヒトデが大発生し、多くが失われた。しかし、現在は全体的に回復傾向。サンゴの回復が遅れている海域においても多くのサンゴ幼生の定着を期待している。

 興さんは「これから島内の他海域でもサンゴの産卵が行われると思われる。風向きによっては、今回の芦徳海岸のように、サンゴの卵の独特なにおいとともにスリック(帯状の固まり)が波打ち際を赤く染めるかもしれない」と話し、「身近なサンゴの命の営みを感じてほしい」と呼び掛けている。