県無形民俗文化財の手々「むちたぼり」

幻想的で軽快な〟白布の舞い〟で魅了した「むちたぼり」=15日午後9時頃、徳之島町手々

幻想的〝白布の舞い〟 徳之島町

 【徳之島】徳之島町北端の手々集落(村山佐ヱ明区長、51世帯83人)の伝統行事「むちたぼり」が15日夜あった。頭からすっぽりと白布をかぶった男性陣と浴衣姿の女性陣が、唄者たちの三味線・太鼓・唄に合わせて幻想的で軽快な踊りで家々を訪問。老若男女が心を一つに県指定の無形民俗文化財を守った。

 「むちたぼり」は五穀豊穣(ほうじょう)や集落の繁栄を願い、唄い踊りながら集落内の家々を巡回する伝統行事。徳之島では集落によって「アキムチ、ムチタボレ、イッサンサン」など呼称もある。県は「徳之島の餅もらい行事」(手々区民芸保存会など計12組織)を5月7日、県無形民俗文化財に指定した。

 手々では、住民が家々で「送り盆」を済ませた午後8時過ぎ、手々小中学校の全児童生徒(5人)から70歳代まで幅広い世代の約40人で編成した踊り連が主会場の同校校庭を出発。唄者らを先頭に集落小組合の各代表宅など5戸を訪問し、幻想的で軽快な〝白布の舞い〟を披露した。この後再び校庭に戻り盆踊りの輪も広げた。

 唄者役の一人として先導して盛り上げた同集落の村山区長(73)は「県文化財への指定は先輩方の長年の努力のおかげ。今後の課題はやはり継承者たちの確保。都会からの家族留学やIターンなどのさらなる増進、人口対策に頑張りたい」と汗を拭った。

 集落外からの見学者の中には、休憩タイムの「六調」踊りにも飛び入り参加して楽しんでいた環境省徳之島管理官事務所の大谷慧・国立公園管理官(29)の姿も。「農業の形を含めて人々と自然が非常に近い。人々がどういう思いでこの祭りを作り上げたのか、尊重していくことが環境文化型国立公園を目指す上で重要と思う」と話していた。