泉芳朗氏題材に新作挑戦

相三味線(曲師)東家美(みつ)さんとの息の合った掛け合いも魅力。とある海岸で、まだ見ぬ奄美への思いを込めて(提供写真)

恵比寿「大吉」で埼玉奄美会の打ち上げでメンバーらと(壁に沿って右2人目から、里村さん、東家一太郎さん、東家美さん)

復帰運動「日本にとって素晴らしい財産」
浪曲師・東家一太郎さん

 【東京】関東天城町会顧問で埼玉奄美会会長代行の里村哲正さんとの出会いをきっかけに人気アニメ「ONEPIECE(ワンピース)」の浪曲パートでも知られる浪曲師の東家一太郎さんが、復帰運動の先頭に立った「奄美のガンジー」こと泉芳朗氏を題材に新作へ挑戦している。完成への意気込みなどをインタビューした。

 「里村さんが浅草木馬亭によく聴きにいらして、応援してくださいます。浪曲は日本の大事な文化だから多くの人に聞いてもらいたいといつもお仲間もお誘いくださいます。2024年の春頃、終演後に奄美の皆様とお酒を酌み交わしました。情に厚く、心根が深く、故郷愛に満ちて、そして何よりお酒が強い。 皆様のお人柄と楽しい時間にすっかり奄美のファンになりました」

 泉氏のことを浪曲にしてほしいと、 里村さんから依頼される。

 「現在、『泉芳朗の歩んだ道』などの書籍やインターネット、新聞の記事などで構想を練っている段階です。『泉芳朗詩集』を読み込んで、詩人・泉芳朗という人物を身体に染み込ませて演じたいと思っております。 日本復帰運動のリーダーが詩人であることがとても興味深い。弱者の立場に立ち、平和と故郷を愛し、胸の内がふつふつと燃えている人物という印象です。 泉先生のことを知らない人にも分かりやすく、飽きずに浪曲でお伝えする工夫が必要です。 奄美にはまだ行ったことがありませんので、関東にお住まいの奄美の方々との交流で、お話を伺い、肌で奄美の素晴らしさを感じ取って浪曲に生かしたいと思います」

 新作への資料は整いつつあるが、さらなる充実への願い。

 「感動いただける作品を作って、いずれは奄美で浪曲を披露できることを夢見ています。黒糖焼酎を島で飲みたいです(笑)。本土復帰前の苦しかったエピソード、泉先生のお人柄が感じられるエピソード、おっしゃっていたお言葉、奄美新聞の読者の方から、今後泉先生への熱いメッセージなどございましたら浪曲の参考にさせていただきたい」

 緊迫の今だからこそ、戦後80年に平和を願う浪曲の完成を目指す。

 「クライマックスは高千穂神社『断食悲願』の詩を読むシーンでしょうか。泉先生の詩と情熱を浪曲の節と三味線で表現します。 ウクライナとイスラエル、世界情勢が緊迫し、戦争が続いている今、泉先生と奄美の人たちの力で復帰運動が成功したという歴史は、日本にとって素晴らしい財産です。戦後80年、平和を願う、泉先生の浪曲に挑戦できることに感謝しております」

メモ

 東家一太郎(あずまや・いちたろう)1978(昭和53)年、東京都新宿区出身。早稲田大学卒。2007年二代目東家浦太郎門下に入門。浪曲を知らない世代へ新作で魅力を発信している。一般社団法人日本浪曲協会理事、18年度には文化庁芸術祭新人賞(大衆芸能部門)を受賞。4月6日(日曜)は、浅草木馬亭浪曲定席で主任出演。27日(同)は、横浜にぎわい座で独演会(午後2時開演)を開催する。