ツルラン群生地が無残

ツルラン群生地が無残

ツルランが根こそぎ盗採された痕跡=6日、徳之島町内の山中

 

盗採前のツルランの群生地=池村茂さん、昨年7月14日撮影

 

「70株以上」盗採か
国立公園2種特別地域
徳之島

 

 【徳之島】奄美群島国立公園の第2種特別地域内でもある徳之島中北部の「ツルラン(国指定絶滅危惧Ⅱ類)群生地の山中から、「70株以上」とみられるツルランが盗採被害に遭っていたことを、県自然保護推進員ら関係者が6日までに明らかにした。規模的に、複数による計画的〝犯行〟も考えられ、「世界自然遺産登録を再推薦したばかりで、イメージも落とす行為だ」と落胆させている。

 ツルラン(単子葉植物網ラン目ラン科エビネ属の常緑多年草)は、東南アジアを中心に日本(九州南部、南西諸島)や中国、台湾、オーストラリア北部など広い範囲に分布。広葉樹林下の林床に地生し、花姿が鶴に似ていることからツルランと命名。環境省レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類だが、県や徳之島3町条例上の盗採・持ち出し禁止の種には現在のところ含まれていない。

 大規模な盗採被害を確認したのは、県自然保護推進員の池村茂さん(62)とNPO法人徳之島虹の会理事の美延治郷さん(62)。一帯の森林はアマミノクロウサギの巣穴が確認されているほか、多彩な希少動植物が生息・自生。そのホットスポットをぬう林道は、最適なエコツアーコースとして注目を集めている。

 池村さんによると4日午後3時ごろ、自然保護監視パトロールで同林道を通行した際、群生地が気になってのぞいたところ、土が掘り返されてツルランが消えていた。「密度的に考えて70株以上だと思う」。林道沿いという環境から「車を横付けして積み込みやすい。面積は約70~80平方㍍。1人の仕業じゃない感じがする。一部に新しい葉があり、今年に入ってからの仕業だと思う」と分析。

 林道沿いの森林は「民有地」とみられる。種の保存法や条例上の採取・持ち出し禁止など指定種ではないが、「窃盗行為」に該当する可能性も。

 池村さんは「夜間パトロールもするが、昼間であっても死角があったりする。世界自然遺産登録を前にイメージが悪い。たとえ特別保護地区や天然記念物でなくても、毎年、きれいな可憐な花が咲くのを楽しみにしている人がいる」。

 美延さんも「監視カメラの画像点検と併せ、パトロールも強化する必要がある」と話した。