参院選@奄美①

何度も盗掘の被害が出ている奄美大島のウケユリ自生地で確認された穴

盗掘・盗採
監視カメラを抑止力に

 実際に現場で感じたのは異様さだった。5月下旬に取材先の奄美大島南部の山中で、絶滅危惧植物のウケユリの盗掘跡とみられる穴を確認。現地は開花期でつぼみが膨らんできている株もいくつかあったが、やぶの中で簡単には外からは見えない地点に穴が掘られていたのだ。同行した奄美大島自然保護協議会の関係者らによると、現場は2年前にも盗掘被害が発生していて、その時は無残にも球根だけが持ち去られ、切られた茎は近くに捨てられていたという。

 今回盗掘でないかという穴が掘られていた箇所は、奄美群島国立公園内で規制がかかるエリア内に位置する。環境省職員なども立ち会いウケユリの盗掘かどうかが検討されたが、禁止行為とされている穴を掘って植物を持ち去ってはいるが、持ち去られたのはウケユリと断定できないとの判断だった。

 ただ長年この自生地を観察する専門家は、「ウケユリの群生が年々減少しており、盗掘の被害を受けているのでないか」と指摘する。「前回の時は茎などが残されていて盗掘されたと断定できたが、最近は穴が分からないように石を置いて痕跡を隠したりする事例もあった」。より悪質、巧妙化している

 このような絶滅危惧植物の盗掘は毎年のように発生しており、被害を受けた種はダイサギソウ、オキナワチドリ、アマミアワゴケなど特にラン類が多い。同協議会は希少野生動植物の盗掘や盗採などを防ぐため、平日の島内のパトロール業務の人員を4人に増やして対応している。

 □監視体制

 パトロール員の山下弘さんは、奄美の植物に詳しく写真家として『奄美の絶滅危惧植物』などを刊行している。山下さんはなくならない盗掘・盗採について、住民の意識向上や監視体制の強化などを提言している。

 ただパトロール員の増員については、山下さんは慎重な考えをみせる。「簡単にパトロール員を増やすことには賛成できない。信頼できる人なら良いが、そうでない場合は逆に盗掘・盗採といった問題行動が助長されてしまう」。

 山下さんはパトロール員の増員より林道内などに監視カメラを増設することが、被害防止に有効でないかと考える。「パトロール員を増やしても、24時間ずっと警戒することはできない。監視カメラの増設で対応するのが妥当でないか」と強調する。

 住民の意識向上を課題とみて、「奄美大島の人たちが自然を学び、貴重な自然だという認識を持つことが必要だろう。超党派議員連盟の『奄美の宝を次世代に繋ぐ議員の会』の活動が盛り上がり、住民の間に自然保護の意識が浸透していけば良い」(山下さん)。

 □通行規制

 協議会のパトロール業務は平日が対象で、環境省はカバーできていない夜間や休日の業務を民間に委託。2015年度から夜間パトロール業務を3年間請け負っているNPO法人奄美野鳥の会(鳥飼久裕会長)は、生きものが繁殖期などで活発に活動する期間に島内の主要な林道を巡り、不審者や不審な車両等に注意を払っている。

 鳥飼会長は、「奄美大島は林道が整備されていて、いろいろな場所から森林部に入りやすいことで問題が起きやすいのでないか」と推察する。沖縄県の国頭村は林道を通行規制していることから、「(奄美大島では)一部で通行規制がされているが、可能なら島内の林道の規制範囲を広げてはどうか。監視カメラの増設も有効で、ダミーの設置でも構わないだろう。監視の目があることが抑止力につながる」。

 協議会は今年度県の事業で、監視カメラ30台の設置を計画。環境省奄美群島国立公園管理事務所の千葉康人世界自然遺産調整専門官は、「環境省も国立公園内に監視カメラを増設している。協議会の監視カメラと連携し、盗掘被害の防止に努めたい」と意気込む。

 関係機関は問題解決に監視体制の強化や、啓発活動による自然保護意識の高揚などを考えている。継続的な子どもたちへの普及啓発で自然保護意識を醸成し、監視カメラに頼らないでも希少種を守れるような取り組みが必要だろう。

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 早ければ来年夏にも世界自然遺産登録の判断が下されるが、自然遺産候補地の価値を損なうような希少種の盗掘・盗採は後を絶たない。またこれ以外にも、産業や暮らしなどに関する課題が奄美には山積している。国政の場でどう向き合うか。奄美から発信してみた。