不出漁、しばらく続く可能性

台風接近のため漁船の係留作業を行う漁業者(8日午前10時ごろ、名瀬港湾内)

盆直撃に漁業者「刺身が提供できない」
台風9号影響、10号近づく恐れ

 4日に発生した台風9号の影響で、奄美群島では5日以降不出漁が続いている。群島の漁協関係者は「波が安定するまで1週間はかかる。稼ぎ時の盆時期(13~15日)に地場産の魚介が提供できず頭が痛い」とこぼす。さらに10号も奄美地方に近づく恐れが出ており、今後の出漁見通しはいまのところ立っていない。

 同群島の漁業は一本釣りなど日帰り漁が多いため、5㌧未満の小型船舶が主流。波高3・5㍍以上になると出漁できない。台風による高潮は通過後も続くことから、台風が断続的に接近すると不出漁の長期化につながり、宴会で振る舞われる刺身のシビ(キハダ)が品切れするなど市民生活への影響が懸念される。

 フィリピン沖で発生した9号の進路予想を踏まえ、群島内の各漁協では組合員が所属港内で船舶の陸揚げや係留を強化するなど対策に追われた。

 名瀬港湾では8日午前中、名瀬漁協(満林春男組合長)の組合員が船の係留作業を急いだ。70歳代男性は船首からロープを対岸に渡しながら「天気図を見て、しばらく仕事はできないと判断した」と話した。

 同漁協によるとこの時期はシビや瀬物が揚がるが、数日前から水揚げ量は激減。筆頭職員の光岡史貴さんは「盆前後まで水揚げがない可能性が高まっている。台風の進路次第では不出漁が長引くことも覚悟している」と述べた

 与論町漁協(阿多美智雄組合長)では、組合員が5日から陸揚げと係留作業を行った。関係者は「帰省客や観光客に振舞う商品がない。島外に発注しようにも交通機関のストップで手の打ちようがない」と声を落とした。

 日帰り操業でシビ・カツオ漁を行う奄美市名瀬大熊町の宝勢丸鰹漁業生産組合は9号通過後の出漁を計画。同組合関係者は「奄美の盆に刺身はつきもの。ニーズに応えられるよう準備を整えたい」とし、台風進路を注視している。