大和村で第3回奄美世界自然遺産推進シンポ

地元関係者などが登壇し、持続可能な観光をテーマに意見を交わした

「オーバーユースの調整重要」
人を生かした観光づくりなど提言も

 県大島支庁は23日、大和村の防災センター研修室で「第3回奄美世界自然遺産推進シンポジウム 持続可能な観光~環境と経済の両立~」を開いた。専門家と環境省職員の公開対談や、地元の関係者が参加してパネルディスカッションで意見発表や意見交換も実施された。パネリストから人を資源として生かす観光づくりなどの提言があった。

 オープニングで、大和浜棒踊り保存会による棒踊りを披露。開会で松本俊一支庁長と、伊集院幼村長があいさつした。

 公開対談に、(公財)屋久島環境文化財団の小野寺浩理事長と環境省自然環境局の鳥居敏男局長が登場。奄美・沖縄の世界自然遺産登録の流れや、奄美の観光などを話し合った。

 鳥居局長は、IUCN(国際自然保護連合)の「登録延期」勧告を時間的余裕が取れたと肯定。「IUCNからは観光地で人が多く来て利用が集中しないような対策や、在来種、希少種に影響を及ぼす外来種対策などが指摘されていた。幸か不幸か対策強化や、計画づくりに時間が割けたと考える」。

 小野寺理事長は、「観光で問題になるのは利用過多(オーバーユース)。どこか一カ所に集中しないように、コントロールしてならすことが大切」と指摘。外部資本にも言及し「奄美の観光にも県外資本が入っている。(持続的な観光には)地元にお金が入るような仕組みが必要だろう」とした。

 休憩後に、松本支庁長がコーディネーター、鳥居局長がアドバイザーを務め、小野寺理事長、大和村議会の勝山浩平議長、NPO法人TAMASUの中村修代表、奄美大島観光協会の越間得晴会長の4人が登壇してパネルディスカッションした。

 中村代表は国直集落で展開する体験型観光にふれて、「守るべきシマの宝は、自然・文化・コミュニティの三つ。持続的な観光は、コミュニティの関与が必要。観光は目的でなく、地域づくりの手段」と語った。

 勝山議長は名音青壮年団の活動などを紹介。「国直や大棚の活動に刺激を受けて、名音も盛り上がっている。SNSの投稿を見て、参加したいなど問い合わせが来て村に観光に来る人も少しずつ増えてきた」と話した。

 越間会長は奄美らしい観光について、「人でないか。現在はSNSやITが発達して、シマの人の良さが伝えやすくなった」と強調した。

 小野寺理事長は、「外部資本は止められないが、洗練されるなど良い面もあり否定できない。地元は深く考えて主導権を握る必要がある。奄美大島の各自治体が(観光で)メインとなるものを一つ磨いて発信してほしい」と呼び掛けた。

 鳥居局長は持続可能な観光について、「オーバーユース対策が重要。一つの方法として、規制などのルールづくり。(世界自然遺産の)構成資産を食いつぶさないように、原点に立ち返り考える必要がある」とまとめた。