埋葬過程や儀礼の解明期待

奄美の中世人骨などを調査する鹿児島女子短期大学の竹中教授ら

保存良好な 中生人骨の出土続く
鹿女短、竹中教授ら調査研究

 鹿児島女子短期大学の竹中正巳教授(骨考古学)などによる佐念モーヤ(宇検村指定文化財)の調査が先日行われた。竹中教授らは県内外の遺跡などから出土する人骨を研究し、葬制の変遷等を調べている。竹中教授は「発掘調査が行われ奄美の中世墓からの資料が増えており、島ごとの埋葬の特徴や埋葬儀礼の解明につながるのでは」と期待している。

 竹中教授は喜界島の城久=ぐすく=遺跡群などから出土した中世の人骨の調査データと、宇検村の屋鈍遺跡など中世墓の人骨の比較研究を行うことで当時の埋葬実態を明らかにしたいと構想。2016年から竹中教授らの調査チームは、同村の平田墓地のサンゴ積石墓、屋鈍遺跡の土坑墓、佐念モーヤの3カ所で出土した人骨のデータなどを大学に持ち帰り整理して詳細な分析を行っている。

 平田墓地で調査したサンゴ積石墓は、内部に五つの甕=かめ=と複数の人骨の埋葬を確認。竹中教授は「最初に埋葬された区画に四つの甕。後から拡張された部分に一つ甕が埋められていた。サンゴ石と甕の間にも人骨があり、後から追加されたものかなど埋葬過程を詳しく調べたい」と説明した。

 屋鈍遺跡は2回に渡り調査。最初の調査では、試掘坑(トレンチ)から4基の中世墓とみられる土坑墓を発見。内部からはそれぞれ単体埋葬の屈伸した状態で、男性熟年の人骨3体と女性壮年後期の人骨1体が出土した。

 土坑墓に副葬品はなく、うち男性1体は身長158・4㌢、女性は同146・2㌢と推定。竹中教授は「山がちな奄美大島南部で、中世の人の様相を考える上で貴重な資料」と位置付ける。

 18年9月に行われた第2次調査では前回の調査区域を拡張した部分で、中世の土坑墓とみられる墓を1基発見。墓が掘り込まれた土層からは中国の青磁や徳之島産のカムィヤキが見つかっていることが、時期を中世とする根拠だという。

 土坑墓から見つかった人骨は、屈伸した状態で埋葬。「男性熟年とみられ、前回の調査で発見されたものと違い、うつ伏せで埋葬されている点が珍しい例」とした。

 佐念モーヤは村指定文化財で、集落の墓地内で最大の規模のサンゴ積石墓。現在も花や線香が供えられ、集落で大事に管理し保存されている。

 15年度に村が業者に委託して、佐念モーヤの写真実測を記録。今回は内部の様子を撮影し、埋葬過程などを探り、31体以上が埋葬されていることが判明した。

 竹中教授は3カ所を比較して、「屋鈍遺跡の土坑墓が古い部類の墓で、サンゴ積石墓や佐念モーヤは時期が下がり新しい墓になるのでは」と推測。今後について「出土人骨からの放射性炭素C14年代測定などを行い、所属年代を確定させたい。奄美大島をはじめ、喜界島や徳之島から保存良好な中世人骨の出土が続いている。中世の奄美の人々の形質、系統、生活、風習、栄養状態、埋葬過程、埋葬儀礼などの解明が期待できる」と意欲を見せる。

 竹中教授は奄美大島以外について、「喜界島の城久遺跡群から見つかった中世墓には後から改葬されたものが存在する点が屋鈍遺跡の事例と違う」と指摘。「伊仙町面縄貝塚の中世とみられる土坑墓の例は、頭骨がとられた状態で発見されていて改葬の存在がうかがえる。洗骨改葬の埋葬儀礼がいつから奄美で始まるのかや、それが琉球の影響によるものかなどを知りたい」と語る。

 宇検村は15年度に、村内8集落の墓地調査を実施している。サンゴ積石墓や石塔墓、御影石の墓など588基を分類整理して記録。こうした調査が他でも行われ、民俗学的な視点を含む奄美の埋葬文化の解明につなげてほしい。
(松村智行)