「ヤクシマツチトリモチ」見頃に

真紅の小花が地面を彩る「ヤクシマツチトリモチ」(西康範さん撮影)

奄美大島の最高峰・湯湾岳
冬山に真紅の小花ひょっこり

 二十四節気の「大雪」にあたる7日、奄美地方も各地で15度を下回る今季最低気温を記録するなど、冬らしさが際立った。ひとたび野山に踏み入れば、冬の植物もあちらこちらに。奄美大島の最高峰・湯湾岳(標高694㍍)では「ヤクシマツチトリモチ」の真紅の小花が地面を飾る。奄美市名瀬の西康範さんは同日、寒々しい地面からひょっこりと顔出す愛らしい姿を撮影した。

 奄美の植物に詳しい『琉球弧・植物図鑑』(片野田逸朗さん著、南方新社)によると、ヤクシマツチトリモチはイスノキやクロバイなどの根に寄生する雌雄別株の寄生植物で、雄株は発見されていない。花茎は短く、花は球形~卵状短楕円形。本州から九州にかけて分布するツチトリモチよりも全体的にずんぐりした感じを受けるという。

 県本土(大隅半島)、屋久島、種子島、奄美大島に分布。湯湾岳を彩るこの種はこれまで固有種「ユワンツチトリモチ」とされてきたが、近年の研究により、ヤクシマツチトリモチと同種とされた。

 雨降りしきる7日午前中、西さんは同種を撮影。「例年より、咲いている数が少ない印象を受けた。暗くて撮るのが大変だったので、ライトを照らした」と撮影時を振り返る。同種の見頃は例年12月中旬ごろで、この時期の湯湾岳ではほかの冬の植物も多く見られるという。

 クリスマスシーズンを前に、ケーキのイチゴを思い起こすような赤い小花を探しに野山に繰り出してみるのはいかがだろうか。その際は防寒グッズの準備もお忘れなく。