伝統の「当間待ち網漁」

組合員らと共に網を引いた県大島支庁林務水産課職員

観光資源化へ課題抽出
県職員招きモニタリングツアー
宇検村芦検

 宇検村芦検に伝わる伝統漁法「当間待ち網」(トウママチャン)の継承活動などを行う「芦検当間待ち網組合」(川畑直俊組合長)は14日、県大島支庁林務水産課職員2人を招き、体験内容の充実に向けた課題の抽出などを目的にモニタリングツアーを催行した。県職員がツアー客役に徹し、実際に説明を受け、待ち網漁を体験。終了後には職員らにアンケートを配布するなどし、今後の観光資源化に役立てる。

 待ち網漁は回遊する魚の習性を生かし、L字型に網を設置。近くに設置されたやぐらから見下ろす見張り番が、魚が入ったタイミングで合図し、網を引くという漁法。トウマは地名で、マチャンは待ち網漁の方言。村はやぐらの新設や、「世界自然遺産奄美トレイル」の同村コースに組み込むなどし、観光資源としての活用を支援している。

 同組合は伝統漁法の存続などのため、漁を観光に生かすことを提案し昨年度、体験受け入れの実施要領を策定。この日は村と連携し、ブルーツーリズムを担当する同課の職員を招へい。実際に要領に基づいたツアーを催行し、課題を確認した。

 午前8時半に集合し、岸に用意されたほこらに手を合わせた後、手漕ぎの船で網を設置。ツアー客は並走するボートからその様子を見学した。その後、組合員の山畑重信さん(70)が待ち網漁が100年以上続く漁法であることや、見張り台として使用していた松が枯れ、現在は県の事業で建てられたコンクリート製のやぐらを使用していることなどを説明。参加者からは、漁の仕組みなどについての質問が挙がった。

 このほか、網に魚が入るまでの時間を利用し、焼内湾が一望できる峰田山公園の案内も実践。展望台からはイルカも見え、好評を得た。

 午前11時ごろに軽トラックで網を引き、魚を捕獲。この日の漁獲はクロヒラアジなどわずかで、参加者らからは「魚がもう少し捕れればなお楽しめた」、「漁開始前に説明を受けることができれば」などの意見も聞かれた。

 川畑組合長は「待ち網漁は全国でも芦検だけのもの。組合員全員が漁について説明できる状態にしていきたい。今後は組合員の心を一つにして、若い人に漁を知ってもらう取り組みを続けたい」と語った。