地区女子対抗駅伝

笑顔でゴールする栄=隼人運動場

地元・奄美会の応援を背に、力走する栄=隼人運動場

大島、3年連続8位
13年連続のBクラス死守

 【鹿児島】第33回鹿児島県地区対抗女子駅伝大会は26日、霧島市の隼人運動場を発着点に、国分下井を折り返す6区間21・0975㌔で健脚が競われ、大島は1時間16分41秒で3年連続の8位。目標に掲げたBクラスを13年連続で死守した。

 大島は1区で久保(鹿児島銀行)が8位スタート。2区・泉(タラソおきのえらぶ)が順位を1つ上げ、7位と序盤で良い流れを作った。4区で1つ順位を落としたが、5区・加藤主将(瀬戸内徳洲会)が区間5位の力走で再び7位へ。アンカー栄は1つ順位を落としたものの、目標の8位以内を死守しBクラスに留まった。

 総合優勝は、最終区で逆転した姶良が3年連続13回目の栄冠に輝いた。2位は鹿児島、3位は肝属。Bクラス優勝は日置、Cクラス優勝は川辺だった。

「命がけ」のBクラス死守
持てる力を出し切る 大島

3年連続の8位だが、意味合いは全く異なる。大島・備秀朗監督は「命がけでつかんだBクラス死守。選手たちをほめてあげてください」と感極まった。

 1区を予定していた川元がケガのため走れず、レースプランを変更せざるを得なかった。1区・久保、アンカー・栄もケガを抱えている中で備監督は「8位以内でBクラス死守」どころか「9位以下、最下位になることも覚悟した」という。

 だが苦しい台所事情だからこそ、選手たちは「8位以内」という目標を明確に持って一致団結。沿道の声援をはじめ島で応援している人たちの想いを背負い、持てる力を出し切った。

 1区・久保が8位で踏ん張り、2区・泉は順位を1つ上げ、期待していた社会人が良い流れを作った。3区・永田は一度抜かれた川辺との争いを制して7位をキープ。豊は順位を落としたが、久々の地元高から出場した意地をみせた。

 加藤主将が再び7位を取り返し、アンカー栄につなぐ。左足首をはじめ満身創痍だった栄まひるだが「笑顔で渡してくれたタスキを何としてもつなぎたかった」と覚悟を決めた。順位を落とし、明らかに本調子でない走りだったが、Bクラスを死守し、笑顔でゴールすることができた。

 「目に見えない力が走らせてくれたレースだった」と備監督は感じた。沿道から聞こえた地元・奄美会の「チヂンの音が勇気づけてくれた」と加藤美友主将は言う。ゴールまで走り切れたのは「あきらめない気持ちと誰かのために走ること」だったと栄は感じた。備監督は苦しんだ分、「今までで一番感動できたレースだった」と最大の賛辞を送っていた。(政純一郎)

社会人選手がチームけん引
「Bクラス死守」の原動力に 久保、泉、加藤

Bクラス死守の原動力になった社会人メンバー。左から野村マネジャー、久保、加藤主将、泉、上原=隼人運動場

 苦しい台所事情だった大島の中で、3人の社会人選手がチームをけん引し、Bクラス死守の原動力となった。
 久保愛結美にとっては本格的なレース自体が一昨年の本大会以来、2年ぶりだった。10㌔ほど体重を絞り、走れる身体は作ったが、スピード練習などは全くこなせず「不安しかない」状態だった。

 1区は全国高校駅伝準優勝の神村学園高の猛者らと競う最重要区間。備監督は「ここを走れるのは愛結美しかいない!」と思っていた。「こんな自分にも声を掛けてくれた」故郷への想いを支えに、8位でタスキを2区につないだ。

 2年連続2回目の出走となる泉賀奈子は、30秒差あった川辺との距離を徐々に縮め、ラスト50㍍で逆転。「少しでも前の位置で渡して流れを作る」仕事ができた。

 5区・加藤美友主将は川辺との37秒差を逆転。「目標達成のためにもがく」走りを主将自らやってのけた。

 大島チームは普段の活動場所がバラバラで、合同練習や合宿でもなかなか全員がそろわないのがハンディーといわれる。「だからこそ集まったときにみんな仲良く、一つにまとまれる」と泉は感じた。大阪から嫁いで、日頃は沖永良部で活動している自分を、昔からの仲間のように受け入れてくれる「温かさ」が大島チームの一番の強みに思えた。

 加藤主将は今大会で引退。島を離れて関東の病院で栄養やコンディショニング、コーチングについて学ぶという新たな夢に挑戦する。また島に帰ってくる時は「指導者になる」という夢もある。5年目で主将の大役を担い「みんなが1つの目標に向かって強い気持ちで一丸になれた」最高の大会にできた。(政純一郎)

地区対抗女子駅伝選手ひとこと

 1区・久保愛結美(鹿児島銀行・金久中卒) ビリじゃなくて良かった。来年はしっかり整えて、ちゃんと走れるようにしたい。

 2区・泉賀奈子(タラソおきのえらぶ) 1つでも前の順位でつないでチームに良い流れを作りたかった。

 3区・永田侑希(笠利中) 川辺に意地でもついていくつもりで頑張った。初めて走ってタスキの重さが分かった。1秒でも早く、紅茉姉ちゃんにタスキを渡したかった。

 4区・豊紅茉(奄美高) 順位を1つ落としてしまって、力不足、申し訳なさを感じた。初めて走ったが沿道の応援が力になった。心に残るレースだった。

 5区 加藤美友(瀬戸内徳洲会) アンカーのまひるちゃんが足に不安があったので1秒でも早く渡したかった。ラスト200㍍をもがいて走って抜くことができた。

 6区 栄まひる・(鹿児島高・古仁屋中卒) タイムは全然ダメだったけれど、みんなが笑顔で迎えてくれてBクラスを死守できた。気持ちがつながって、誰かのために走ることができた。

 上原千怜(薩川小) チームワークで8位を勝ち取れた。今回で引退する社会人の先輩もいるので、来年はもっと力をつけて走りで貢献できるように頑張りたい。

 川元結愛(神村学園高・金久中卒) 1区を走る予定がケガで走れなくて迷惑をかけた。国分に行くのが辛かったが、みんなが温かく迎えてくれたのがうれしかった。

 伊集院若菜(鳳凰高・名瀬中卒) 島を出るときにいろんな人に応援してもらったが、まだ何も恩返しできていない。来年はこの駅伝を走って、島で応援してくれる人、特に母に恩返しがしたい。

 保田ひまり(古仁屋中) 走れなかったけど、応援していてうれしかった。仲が良くて、辛いことも助け合うこのチームなら絶対Bクラス死守できると思った。