「予算不十分、拡大を」

「予算不十分、拡大を」

誘殺数の大幅増、県本土でも幼虫が確認されたことで、ミカンコミバエ防除対策は鹿児島県全体に関係する問題となっている(雄生息調査用のトラップ)

食の安全向上支援 消費・安全交付金33億円
ミカンコミバエなど病害虫対策も全国枠
農水省概算要求

 農林水産省の2021年度予算概算要求で、消費・安全対策交付金は33億2200万円(20年度当初予算額30億2千万円)を計上している。奄美群島関係ではミカンコミバエなど特殊病害虫対策で活用されているが、予算は全国枠で、全国的に流行している「豚熱(豚コレラ)」も対象になっていることから、奄美の農家などからは「食の安全向上に向けた支援のための交付金なのに、この額では不十分」として拡大を求める声が挙がっている。

 来年度予算概算要求で同交付金の対策では、「豚熱を始めとする家畜の伝染性疾病や、ジャガイモシロシストセンチュウなど農作物の病害虫の発生予防・まん延防止および国産農畜水産物の安全性向上に向けた都道府県などの取り組み支援」を掲げる。政策目標として挙げているのが、▽家畜・養殖水産動物の伝染性疾病や農作物の病害虫の発生予防・まん延防止(24年度まで)▽特定の有害化学物質・微生物の食品からの摂取量を科学的評価に基づき設定された耐容摂取量等を超えないように抑制(同)―の二つ。

 対策で筆頭にしている「豚熱」は、これまで「豚コレラ」と呼ばれていたが、人にうつらないのに、人のコレラを連想させることなどから、国が今年2月、法律を改正して「豚熱」に改めた。国内での発生状況は、同省によると、岐阜、愛知、長野、三重、福井、埼玉、山梨、沖縄、群馬の9県で確認(今年9月26日現在)。また、18年9月以降、18都府県で野生イノシシから「豚熱」の陽性事例が確認されている。

 同交付金による事業は、奄美群島では特殊病害虫対策で進められている。ミカンコミバエなど国内への侵入を警戒している病害虫の早期発見のための調査および初動防除、アリモドキゾウムシ・カンキツグリーニング病菌の根絶を目指した防除を推進。19年度実績をみると、群島全域で実施されており、取り組み事例としては瀬戸内町加計呂麻島・請島におけるミカンコミバエ航空防除等支援、喜界島でのアリモドキゾウムシ根絶に向けた防除支援、徳之島・沖永良部島・与論島で発生しているカンキツグリーニング病根絶に向けた防除支援などがある。

 この交付金の予算額について奄美市住用町の果樹専業農家・元井孝信さんは「全国枠での額としては不十分。『豚熱』が大流行しており、この対策費としてほとんどの予算が投入されるのではないか。奄美で行われている特殊病害虫対策のうち、ミカンコミバエは奄美だけでなく県内全体に関係する問題となっているだけに、予算を別枠で確保するなど上積みが必要ではないか。現在、国や県などの関係機関が進めているミカンコミバエの初動防除は農家としても信頼できるだけに、今後も対策が徹底できるよう予算の裏付けを図ってもらいたい」と指摘する。

 地元自治体関係者からも「食の安全に関わる交付金だけに、もっと予算をつぎ込むべき」との要望があり、国会議員を通しての働きかけなど政治的な取り組みも求められそうだ。