「機織り工房」を開放

「機織り工房」の責任者を務める日髙ミスエさん

紬協組・名瀬港町の紬会館4階
9月から織り工3人が利用「〝奄美の宝〟を楽しく織りたい」

 本場奄美大島紬協同組合(牧雅彦理事長、奄美市名瀬浦上町)は、理事会(8人)で同市名瀬港町にある紬会館4階の一室を「機織り工房」として有料で開放することを決め、9月に「機織り工房」が設置された。現在、日髙ミスエさん(73)=織りの伝統工芸士=ら3人が利用している。紬協組は「住宅等の環境の変化で、自宅での機織りが難しくなってきている。そのため、働く場の提供、開放を決めた。後継者育成につなげる目的があり、将来的には観光客が訪れて機織りを見学できる場になれば、大島紬の振興にもつながる」と期待している。

 伊東隆吉専務理事(70)によると、開放した一室は、元の「本場奄美大島紬技術専門学院」があった場所。機織り機は9台ある。使用料は1人月3千円(税込み)。

 日髙さん=奄美市名瀬在住=が工房の責任者を務め、森山トエ子さん(71)=同=、山田ミエさん(71)=同=が利用している。

 伊東専務理事、松原昇司事務局長は「昔は、機屋さんが織り工場を所有していた時代があり、あちこちの家から織る音が聞こえてくる時代もあったが、今は織り工が少なくなっている。例えば集合住宅に住む織り工は〝音〟の問題を抱え、家では織りができない状況がある」「織り工3人から機織り場提供の要望があり、理事会で開放を決めた」としている。

 「昔、織りを習った人でまた挑戦を考えている人、現在は浦上町にある紬学院で学び、修了後さらに技術力向上を目指している人も利用してほしい。技術力継承の場になってほしい」「利用者が増えれば、織り工の仲間づくりの場にもなる」「将来的には、観光客に織りのこと、紬のことを語れる場になればうれしい」(伊東専務理事)。

 日髙さんによると、中学校卒業後50年以上織りの仕事に従事してきた。「今は県営住宅に住んでおり、家で機織りはできない。やれることは機織りだけ。紬は奄美の宝、奄美のためになる仕事」「紬学院を卒業しても1人では不安。昔の織り工場のように楽しくやれたらうれしい。機織り場の提供はありがたい」と感謝していた。

 15日午後に工房を訪れると、日髙さんの知人で、機織り経験のある女性2人が日髙さんを訪ねて来た。1人の女性は「こんな織り場があるといいね」と話し、懇談していた。