伊仙町社福協 面縄小で出前福祉講座

幸野憲繁さんと盲導犬マーガレットを招き面縄小であった「出前福祉講座」=2日、伊仙町

「目標を唱え努力を」
児童を〝逆激励〟 視覚障がい者の幸野さん

【徳之島】伊仙町社会福祉協議会の「出前福祉講座」が2日、同町立面縄小(吉田隆光校長)の4年生12人を対象にあった。視覚障がい者の幸野憲繁さん(65)=同町伊仙=が盲導犬マーガレットと訪問。働き盛りの中途失明の衝撃と失意のどん底から一念発起し、勇気と努力で試練に立ち向かった体験談も交え、「目標を唱え続けて努力をすれば必ず叶う」と児童らを励ました。

同出前講座は各学校側の要望で開いている。高齢者擬似体験と併せて今回は「視覚障がい者の話を聞き、辛いことに立ち向かう勇気と行動を身につけ、盲導犬との関わり方の理解も」と計画。幸野さんも初体験ながらその趣旨に賛同。教室と模擬道路を設置した体育館の2会場(班)に分かれてあった。

幸野さんは旧伊仙農協各支所長など務めていた41歳当時、しだいに視力が衰える網膜関係の病の告知を受けた。農協再建対策室部長の要職などの業務遂行にも支障を来たし始めたため、49歳で退職。そして10年後の59歳には全ての視力を失ってしまう。

「妻や子の顔も見えず、夜も昼も泣きじゃくった。他人に(失明を)知られたくなくて3年間家に閉じこもり、出たくても筋肉が衰えていた。心配と不安で眠れず、酒を飲んで自分の心を誤魔化す毎日。妻とはけんかも絶えなかった」。降り掛かった試練に対峙して押しつぶされかけた3年間の心情を、児童たちに分かりやすく話した。

一念発起の転機となったのは、同じ視覚障がい者たちの組織「サンファミリ友の会」への参加。主要メンバーとして社交ダンスや音声パソコン学習、ウオーキング大会など活動も率先。3年前には盲導犬マーガレット(ラブラドール・レトリバー)と東京で訓練を受け、福岡県内の盲学校でも学んだ。町社福協ガイドヘルパーの介助協力もあり積極的に外出もしている。

積極体験を踏まえ児童たちに「自分の性格を直せることを知った。人生は一生が勉強。『百点を取る』と目標を決めて繰り返し唱え続け、努力をすれば必ず叶う。友だちも大切に思いやれば自分に返って来ます」。常にポケットに忍ばせて決意を忘れないようにしているという「松ぼっくり」も用意して全員にプレゼントした。

この後マーガレットの誘導で模擬道路の歩行なども披露。児童たちはその従順さと賢さに感動し、「犬はこわくて嫌いだったが好きになった。困っている方には手助けをしたい」(窪田悠真君)の感想も。町社福協の幸多実会長も「高齢者や視覚障がい者を町で見かけたら、お手伝いをしましょう」と呼びかけた。