島外移動規制スタート

奄美空港で旅行者へ対象品目の島外移出規制を喚起する植物防疫官

植物防疫官
対象品目、取締り強化

奄美大島へのミカンコミバエ侵入に伴い13日、植物防疫法に基づく緊急防除による規制対象品目の島外移動規制が始まった。奄美大島への玄関・出発口となる奄美空港や名瀬港では同日、植物防疫官が旅行者に対して規制取り締まりを実施。従来からの緊急防除や14日から奄美市と瀬戸内町を皮切りに始まるポンカンの廃棄作業などと合わせ、ミバエ種群の早期根絶に期待を寄せる一方、大切に育てた果実を出荷できない現実に、生産農家からは落胆の声も聞かれる。

奄美市笠利町の奄美空港では同日、搭乗手続きカウンター前と保安検査場に配置された植物防疫官2人体制で移出規制を実施。防疫官らは対象品目を島外移出しないよう喚起する掲示用ポスターを手に、手荷物を預けるなどの際に通すセンサーで果実類を確認した場合、搭乗者の理解を得た上で処分するなどの水際対策を行っていた。

門司植物防疫所名瀬支所によると、奄美空港では荷物内にポンカン、温州ミカン、パッションフルーツ、リンゴ、トマトなどの対象品目を確認し、移動阻止した。

県大島支庁農政普及課の奥真隆課長は、「移動規制は関係者だけでなく、島民全体にかかわる問題。14日以降は各市町村でポンカンの廃棄作業を進めていくが、島外移出禁止への理解はもちろん、寄生植物の除去など防除にも協力していただき、島が一体となって一刻も早い早期根絶に取り組む必要がある」と話した。

14日にポンカンの廃棄作業が始まる奄美市では13日、集荷場所となる同市名瀬の奄美大島選果場へ果実を持ち込む農家の姿がみられた。農家らは着色が進んだ果実を専用の箱に移し、複雑な表情で計量を見守っていた。

同市住用町の60代農家は、「夏の熱い時期の管理作業や摘果作業などの苦労を思うと、これまで出荷できていた果実を廃棄するのはつらい」と胸の内を明かし、「早期根絶のためにこの1年間を“我慢の年”と位置付け、来年は出荷できると見込んで今年以上の品質の果実を育てたい」と述べた。

同市名瀬の栄敏昭さん(72)は、「今まで島外の子どもたちや親戚などに送ったり、自家消費用に育てていた。年末の便りとして楽しみにしていただけに、移出禁止は残念」と語った。

対象品目ごとに設定された移動制限基準日以降、誘殺が確認された地域から半径5㌔以内を特定移動制限区域に指定し、島外出荷を禁止する。規制期間は同日から2017年3月31日まで。区域内で生産された果実などは自家消費や島内流通、加工品用を除き植物防疫官が廃棄命令を行い、県が全量買い上げて廃棄される。

規制に基づく廃棄作業は奄美市、瀬戸内町が14日、宇検村は15日から始まる。龍郷町、大和村については集荷状況により順次廃棄を進める予定。