多方面への影響懸念

加工品直売所で“主力商品”として並ぶタンカン、ポンカンの加工品(資料写真)

移動規制スタート 経済不安や支援要望
情報の周知徹底も求める

奄美大島へのミカンコミバエ侵入に伴い、植物防疫法に基づく緊急防除による移動規制が13日からスタートした。島内5市町村では14日以降、収穫期を迎えたポンカンの廃棄作業も行われるが、生産農家のほか流通業、卸小売業、製造業など移動規制や対象作物の廃棄による多方面への影響の波及も懸念されている。関係業界からは経済的損失への不安や、支援体制の充実、情報の周知徹底など求める声があがっている。

収穫期に入ったポンカンが毎日約100㌔出荷されている㈱名瀬中央青果。同社の福山治社長によると、先月県が決定した買い上げ単価よりも低い値で取引されているという。

福山社長は「今市場に持ってきている人たちは、各市町村が示した廃棄計画を知らない人ばかりだと思う。14日から廃棄命令による廃棄作業が始まれば、市場に持ってくる人も減ってくるのではないか」と推測した。

一方、島内の小売業者らでつくる名瀬青果食品協同組合の平井雅人理事長は「小さな店にとっては地場産のタンカンやポンカンは大手スーパーに対抗できる唯一と言っていい主力商品で、それを扱えないのは本当に痛い。仮にいくらか量を確保出来たとしても島内のみの販売では知れている。組合員の多くは島外への通信販売に力を入れており、問題が長びけば小売は小さいところから順に倒れていく」と危機感を募らす。

「今はまだ組合でもそれほど切迫感はないが、年明け以降、タンカンを扱うシーズンになっても今のように先行きの見えない状況が続けば、不満の声はますます大きくなると思う。タンカンの収入を見込んで借入の返済計画を立てている店もあるし、繁忙期がなければパート雇用をやめないといけない」と平井理事長。「早期根絶を望むが、いったん離れた客が来年戻ってきてくれるか、風評被害が尾を引かないか、不安は尽きず、行政にも可能な限りの支援をお願いしたいのが本音」と訴えた。

奄美市住用町の国道沿いに加工・直売施設を構える「サン奄美」。代表の師玉洋子さんは「農家が全量廃棄の意向を示しており、商品の原材料確保は難しいと考えている。ゼリーやジュースなどタンカン、ポンカンの加工品はお店の主力商品なので、それがなくなれば売上の減少は避けられないが、新たな商品開発などみんなで知恵を出しあい何とか危機をしのぎたい。今は『一日でも早く通常の状態に戻ってほしい』との思いだけ」と話した。

奄美大島商工会議所やあまみ商工会の調べ(12月第1週末時点)によると、同問題に伴う奄美市内における関係業界への影響は、流通業約1億2500万円、卸小売業約1億3千万円、製造業約8300万円と試算。流通業は郵便事業や大手宅配業者への影響が9割以上とされるが、製造・卸小売業に関しては、地元事業所を中心に影響を受けると見込まれている。

農家、流通・卸小売業など関係者への意見聴取を行っている奄美市議会産業建設委の多田義一委員長は「島の経済全体に及ぼす影響があまりにも大きいというのが実感。商工業者等への対応は金融支援が柱になると思うが、市議会では今会期中にミバエ問題に対応するための特別委を設ける方針で、そこで可能な支援のあり方など検討し、意見書としてまとめる形がとれれば」などと述べた。