タンカン廃棄作業

龍郷町で行われているタンカンの廃棄処理。当初の予想を上回る量が持ち込まれている

「隠してタンカン送っている」
自治体に情報

果実・果菜類の重要病害虫ミカンコミバエの侵入で、奄美大島は緊急防除区域となり、島外に寄主植物が出荷できない移動制限区域となっている。現在、関係市町村ではポンカンに続きタンカンの廃棄処理作業が進められているが、「隠してタンカンを送っている」という情報が寄せられている自治体もあり、あらためて地域住民に島外出荷の禁止徹底が求められそう。

植物防疫法に基づく緊急防除による移動規制は昨年12月13日、農林水産省が省令を施行。移動規制は、ミバエ種群が寄生している恐れのある果実等の移動を禁止することで、未発生地域へのまん延を防止することが目的。対象品目ごとに設定された移動制限基準日以降、誘殺が確認された地域から半径5㌔以内を特定移動制限区域に指定し、島外出荷を禁止。区域内で生産された果実などは自家消費や島内流通、加工品用を除き植物防疫官が廃棄命令を行い、県が全量買い上げて廃棄される。

農水省はこれまでに4品目の基準日を設定。ポンカンは昨年9月26日、タンカン同10月8日、スモモ来月22日、マンゴー6月14日としている。基準日が過ぎたポンカン、タンカンについては特定移動制限区域を設けており、範囲は奄美市笠利町の一部を除く奄美大島全域、加計呂麻島、請島、与路島となっている。

規制に基づく廃棄作業は各市町村が実施主体。果実の廃棄作業は奄美市などが省令施行日の翌日から実施。現在、各市町村とも廃棄果実は生産量の多いタンカンが主体となっている。このうち龍郷町は浦地区にある農産物集荷場で生産者が持ち込む果実を受け入れ。検量を経て戸口地区にある町有地で廃棄作業。町産業振興課によると、当初の見込みを上回る量が持ち込まれており、タンカンも既に倍近いという。

日曜日以外の毎日、集荷場で受け入れている中、実施に当たり町は週ごとの地区指定(第1週赤尾木地区など)、1㌧以上など量が多い生産者は毎週金曜日に受け入れなどで対応。予想以上に量が多いため、生産者の持ち込み希望を優先し町は柔軟に受け入れている。

早期根絶を目指し生産者もミカンコミバエ寄生のリスクがある果実をもぎ取り、廃棄を率先している一方で警戒しなければならない情報が自治体に寄せられている。町産業振興課によると、「他のものに混ぜて隠す形でタンカンを本土に送っている人がいる」という内容。同課は「自家消費用などとして残すことは可能だが、島外に出荷することは絶対にできない。すべての町民のみなさんが移動規制に協力してほしい。それが早期の規制解除になることを理解していただきたい」と呼び掛けている。

果実廃棄1千㌧超え

奄美大島5市町村 当初予想上回るペース

奄美大島へのミカンコミバエ侵入に伴い、緊急防除に基づく対象果実の廃棄作業が島内5市町村で行われているが、14日現在で廃棄量はすでにポンカン・タンカン合わせて1千㌧を超えたことが分かった。廃棄量は当初予想をはるかに上回るペースだが、県食の安全推進課は「庭先で作られた果実の持ち込みが、かなり多いことなどが要因では」と推測している。
 
ポンカンの廃棄・買い上げは昨年12月14日以降、タンカンも同月末頃から5市町村で順次、開始。同課によると、今月8日現在、ポンカンが257㌧、タンカンが453㌧、合計で約710㌧が持ち込まれた。ポンカンは大方、持ち込みが完了している。

また5市町村の担当課によると、ポンカンの持ち込みは奄美市125㌧(12日現在)、大和村8・8㌧(8日現在)、龍郷町22・4㌧(12月末現在)、宇検村約30㌧(14日現在)、瀬戸内町81・6㌧(5日現在)。

タンカンが奄美市485㌧(12日現在)、大和村0・8㌧(8日現在)、龍郷町93・3㌧(14日現在)、宇検村約100㌧(同)、瀬戸内町132・2㌧(同)。数値の統計日が市町村ごとに異なるが14日現在、タンカンは5市町村合計で少なくとも810㌧以上が持ち込まれた計算。

5市町村いずれも、ポンカンの持ち込みは当初予想を上回り、タンカンも予想を超えるペースで持ち込まれている。奄美市によると、これまで多い農家で一日20㌧の果実の持ち込みがあったほか、ポンカン、タンカンの持ち込みが重なった1月5日は最大73㌧の果実が持ち込まれた。

各市町村の担当者からは「当初の予測は農協の共販や市場に出回っていた過去の統計に基づくもの。自家消費用などが予想よりもかなり多く持ち込まれている」「こちらが全く把握していなかった農家(の持ち込み)もあった」「ポンカンは“表年”で、『昨年の2~3倍なった』という農家の声もある」など意見が聞かれた。

県は「タンカンの買い上げ量は当初見込み(約800㌧)より、はるかに多い約1500㌧」(昨年末の自民党県議現地視察の際の説明)との見通しも立てている。

 県食の安全推進課の島津孝子課長は「12月補正で足りなかった分の廃棄果実の買い上げ費については3月議会に提案し、議会の理解を求めていく形になる」と説明した。