回復傾向、動物園での治療へ

徳之島の地域住民からの募金を受け取った伊藤圭子獣医師(写真右)=4日、奄美動物病院=

クロウサギ 回復
事故後保護され、順調に回復に向かうアマミノクロウサギ(提供写真)

徳之島のアマミノクロウサギ
NPO募金贈呈 傷病個体の保護、促進へ

 昨年末、徳之島で事故に遭ったアマミノクロウサギ=国指定特別天然記念物=の容体が回復に向かっている。同個体はさらなる治療を行うため、鹿児島市の平川動物公園に搬送。出発を前に4日、徳之島の自然教育・保護の活動をするNPO法人「徳之島虹の会」(行山武久理事長)は、同個体の保護・治療を続ける伊藤圭子獣医師(奄美動物病院)に、地域住民から寄せられた募金を贈呈。奄美の固有種の保護に向け、地域住民のいっそうの意識向上に期待を寄せた。

 事故に遭った個体は生後約1年のメスの個体。昨年12月に同NPOの池村茂副理事が徳之島町花徳を通る農道で発見し、島内の動物病院に搬送。その後過去2回、アマミノクロウサギの個体を受診している伊藤獣医師に預けられた。

 顎の骨折や意識障害など、一時死の危険があった同個体は伊藤獣医師らの治療で一命を取り留めた。現在は失明状態だった両目は左目が明暗を感じるまで回復。流動食以外にも小松菜やリンゴなど、固形のエサも食べ、夜間は室内を動き回り、鳴くこともあるという。

 募金は1月20日~2月3日まで、島内34カ所に募金箱を設置し、個人・団体から約17万4千円が集まった。募金を受け伊藤獣医師は「この個体を含め、今後の傷病個体の保護のために使わせてもらう」と感謝。同NPOの池村副理事は「短期間で想像以上の募金が集まった。これを機に地域に自然保護の意識が高まってほしい」と、奄美での野生生物の保護・観察の施設整備への意識向上に期待を寄せた。

 同個体は4日夜、フェリーで同動物公園に向け出発。動物園担当者によると、受け渡し後は投薬治療などで経過を見ながら体力の回復を促す予定。担当者は「容体は回復しているが、予断を許さない状態と聞く。以後は体力の回復に努め、無事成獣へと成長するよう注視していきたい」と話した。