奄美の生物多様性理解

名瀬公民館金久分館で行われた生物多様性シンポジウム

研究者ら講演・パネルディスカッション
維持継続「地元にかかっている」

 生物多様性シンポジウム「奄美群島の生物多様性・その魅力を再発見」(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室、鹿児島大学重点領域(環境)、「南薩諸島の生物多様性とその保全に関する教育研究拠点整備プロジェクト」主催)が21日、奄美市名瀬の名瀬公民館金久分館であった。奄美の自然について島内外の研究者による講演やパネルディスカッションを実施。奄美の生物多様性について理解を深めた。

 同シンポジウムは「南薩諸島の生物多様性とその保全に関する教育研究拠点整備プロジェクト」の研究成果を発表する機会として企画。同時に、奄美在住の研究者らと互いに奄美群島の生物多様性の魅力を紹介しあい、この自然を維持してきた島の歴史や伝統的生活の意味について考えることが目的となっている。

 講演は植物写真家の山下弘さんによる「湯湾岳の希少植物」を皮切りに6人が登壇。森林や植物、海洋生物、海藻、野鳥、動物などをテーマに、自然の豊かさや人との関わりなどについて説明。「人間とあまくろの交差点・野生動物の観光利用を考える」をテーマに語った同センターの鈴木真理子さんは林道の観光利用がアマミノクロウサギの生理や行動に影響を与えているかどうかを調査。「人と野生動物の生活は複雑に交差している。共存のためには動物への影響を見直しながら長期的にモニタリングする必要がある」などと語った。

 講演の後には講演者とコメンテーターを務めた高宮広土教授(鹿児島大学島嶼研)と鈴木祥之上席自然保護官(環境省奄美野生生物保護センター)、パネラーの桑原李雄教授(鹿児島大学法文学部)、大海昌平さん(奄美両生類研究会)によるパネルディスカッションを実施。「多様性という言葉がない時から、奄美では上手に自然を利用し、生活してきた」「最近になり、色々な人が色々な形で掘り起こしてきたことで、奄美の生物多様性が明らかになってきた。一番難しいのはこの多様性を維持していくこと」「多様性の維持継続は、地元にかかっている」と、地元住民、研究者それぞれの立場から提言。来場者からも「どんなに希少種指定したところで、相変わらず希少な昆虫を採取にくる人はいる」「森林伐採や採石などで崩される場所にも希少な生き物はいる。このままではいけないのでは」など、現状に対する意見も挙がった。