自身の経験から経営哲学を紹介した銀座もとじの泉二社長
東京・銀座で専門特化した呉服店を展開する「銀座もとじ」の泉二弘明社長(66)の講演会(奄美ふるさと100人応援団連絡協議会主催)が24日、奄美市内の集宴会施設であった。自身の呉服店経営から業界の常識にとらわれない業態への挑戦や、オンリーワンのものづくりなど顧客目線に基づいた独自のビジネス理論を紹介。「大島紬業界も一つのチームを結成し、オンリーワンのものづくりを」と呼びかけた。
泉二社長は龍郷町中勝出身。1979年に銀座に開店した「もとじ呉服店」を皮切りに事業を拡大。2000年に織りの専門店「和織」、02年には日本初の男性の着物専門店「男のきもの」を開店するなど、新しい業態と市場を確立するなど「呉服業界の風雲児」と評されている。
「夢の実現」と題した講演では、仕立て代などを含んだ着物の適正価格表示や男性向け着物専門店の開店、1万人以上の顧客情報を記した「きものカルテ」の作成など、顧客目線の経営手法を紹介。泉二社長は「周囲と同じことをしていたら勝てない。どうしたら目標を達成できるか、考え方を変えて情熱を持ってやり続けることが大事」と熱弁をふるった。
長年の品種改良の末に生まれた蚕を使用して、約10年前から商品化に取り組む「プラチナボーイ」事業にも言及。反物には養蚕農家や糸の紡ぎ手、染めなど携わった人の氏名が確認できる「トレーサビリティー」を導入。職人相互間の職場見学などを通じ、責任感やチームワークが向上し、提供する品質もより良くなった事例を紹介した。
本場奄美大島紬業界は減産が続き、生産反数はピーク時の約2%にとどまるなど逆風が吹く中、泉二社長は「大島紬でもチームでのものづくりができないか。不景気はチャンス」と指摘。「織元を監督、プロデューサーとして、各工程の人たちや役割を全うすれば、質の高いオンリーワンの商品ができておもしろい」とアドバイスした。
講演に先立ち、「あなたが選ぶ大島紬」展の表彰式もあった。