売りは「日本一早い新そば」

「挽き立て、打ち立て、茹で立て」の奄美産そばを楽しむ試食会参加者

奄美産そば1
プロジェクトで収穫した奄美産そばを提供する大田さん

都内で試食会、奄美産そばに舌鼓
「味よし、香りよし」 国内ブランドと肩並べる美味しさ

 【東京】奄美地域の特性を生かした島おこし活動を推奨し、遊休地やサトウキビの輪作としてそば栽培の普及に取り組んでいるNPО法人奄美島おこしプロジェクト(本部・奄美市住用町)は23日、「~奄美でとれた新蕎麦を味わう~奄美産そば 試食会」を文京区小石川の「石臼挽き 手打ちそば『紀庵』」で開催した。1月に住用のほ場で収穫したばかりの奄美産そばは、味、香り、コシともに、国内でブランドを確立しているそばと肩を並べる美味しさ。5月に収穫できる奄美産そばは「日本一早い新そば」として売り出す事ができ、その存在を知る首都圏の蕎麦店からも注目を集めている。

 ■将来性見込める奄美産そば

 奄美産そばは同NPOの働きかけにより、2011年に宇検村、13年から奄美市住用町で栽培を開始した。品種は九州沖縄農業研究センターが暖地栽培に適したものとして、新潟県在来種と長崎県対馬在来種を交配して作り、2010年に登録された「さちいずみ」。国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構は「色、香りよく、そばらしい食感を備えている」のほか「収量が多く、外観性に優れ、食味は『常陸秋そば』『鹿屋在来』と同等かそれ以上」と高く評価している。

 サトウキビの輪作を考えた場合、3月に種を蒔いても初夏を迎えて需要が高まる5月には収穫でき、お墨付きの食味に加え、奄美産と言う希少性と「日本一早い新そば」という付加価値・話題性がある。新品種を知るそばファンは既に期待を寄せており、業界も注目。まとまった収量があがれば「扱いたい」という製粉会社や店舗もある。

 ■そば通も「また食べたい」

 今回の試食会は、まだ流通に乗っていない奄美産そばの存在と美味しさを知ってもらうことと、奄美の食材を広くPRするために開かれたもの。メニューは黒糖焼酎の肴としてパパイア漬、トビンニャ、豚味噌。そしててんぷら盛り合わせは宇検村産の車エビをはじめ、長命草、ハンダマ、エビスカボチャ。最後に、せいろと長命草を練りこんだ変わりそばの奄美産そば2種が提供された。

 「紀庵」の常連で、常陸秋そばの手打ちそばを食べ慣れている客は「香りも味もコシもしっかりしていて美味しい」「常陸秋そばと変わらないほど」など、初めて食べた奄美産そばに満足した様子。黒糖焼酎やそのほかの奄美の食材が使われたメニューも「とても美味しい」「また食べたい」と好評だった。

 「紀庵」店主の太田守さんは、ブランドそばと遜色ない奄美産そばについて「(首都圏の)店で提供できるだけの量を、奄美の人たちに頑張って作ってほしい」と話し、「5月、日本一早い奄美産新そばの需要はある。扱いたい」と笑顔。

 ■奄美ブランドへの期待

 試食会を主催した同NPO事務局長の大田美紀さんは「そば畑の管理はとても簡単で、種を蒔いた後、ほとんど管理の必要がない。収穫までの期間も約60日で、奄美では年2~3回の収穫も可能。自然豊かな奄美では虫による受粉率も高いため、収量も増える。10㌃の畑で60~90㌔㌘ほどが見込め、奄美でのそば栽培には国の補助金もある」とし、「製粉会社からの引きもあるが、現在は栽培農家が少ない。奄美ブランドとするには収量を上げる必要がある」と輪作として将来性が見込めるそば作りへ、多くの農家のチャレンジを求めた。

 一方、簡単に収入に結びつく作物でありながら奄美でそば栽培が進まないのは「収穫時に必要なコンバインなどの機械がないことが一番の理由」と語る大田さん。中古農具譲渡なども先進地に働きかけたが、輸送コストが大きく実現は厳しい状況だという。しかしそうした課題を克服でき、そばに取り組む農家が増えれば「一面真っ白な花をつけるそば畑も観光資源になる」と二次的な効果にも期待。

 多くの農家へ奄美産そばを知ってもらい、普及させるため、同NPOでは、奄美でも5月頃に住用で試食会を予定している。
(加藤咲絵子)