赤色の実がついているゲッキツ。ミカンコミバエの寄生リスクを避けるためにも撤去が必要だ
農林水産省植物防疫所は30日、奄美群島におけるミカンコミバエの誘殺状況(3月28日現在)を発表した。最新週の3月22~28日までの誘殺件数は緊急防除区域内外ともにゼロ、緊急防除区域の奄美大島(加計呂麻・請・与路島を含む)の誘殺ゼロは14週連続。しかし引き続き警戒が必要で、特に現在の時期の寄主植物ではゲッキツへの寄生対策を関係機関は呼びかけている。
緊急防除区域の奄美大島の誘殺は、昨年12月15~21日の週に2匹(宇検村と瀬戸内町で1匹ずつ)確認されて以降ゼロが続いている。喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島の緊急防除区域以外は12月1~7日の週から17週連続の誘殺ゼロ。2月23~29日の週に1匹の誘殺(伊平屋島で)が確認された沖縄県も4週連続で誘殺ゼロだった。
ミカンコミバエのまん延防止・根絶に向けて国、県、市町村は連携して計画的な防除活動を展開。①発生状況を確認するトラップの増設と調査回数の増加②オス成虫を誘殺し、交尾機会を少なくすることでハエの密度を下げるためのテックス板の設置(人力による設置とヘリコプターによる散布)③主に島外出荷されていた果実の買上げと廃棄④寄生する可能性がある寄主植物の調査と除去―で、地域住民の協力のもと一斉取り組みが効果をあげている。
寄主植物のうち、ミカンコミバエ寄生のリスクが高まっているとして現在警戒されているのがゲッキツ。ミカン科の植物で、奄美大島では庭木、生垣に用いられている。花はミカン類に似て白色で芳香があり、長さ約1㌢の実は卵形で、熟すると鮮やかな赤色になる。
県大島支庁農政普及課は「ゲッキツの実はミカンコミバエが寄生するリスクがあり、せん定など手入れ作業で実も撤去してほしい。野生化している寄主植物ではイヌビワに実がついており、除去してもらいたい」と指摘。ゲッキツは民家で見られることから、地域住民の関心・協力を求めている。
ミカンコミバエが好む「好適寄主植物」では、冬場にも着果するグアバへの警戒感が強い。気温上昇に備え3月中には集落清掃作業日をとらえて、住民参加のもとグアバの果実撤去や枝木の伐採、低樹高化などの作業が各集落で行われた。
特に防除活動が活発なのが瀬戸内町。昨年9月以降の誘殺数が最も多く、年明け後もグアバなどの果実に幼虫の寄生がみられたことから早期根絶に向けた取り組みを強化。請島や与路島では野生化したグアバの樹木が200~400本も確認されたが、町と大島支庁農政普及課、青年農業団体も加わり地域住民の協力のもと伐採作業を徹底。現在はほとんどなく、寄生リスクが軽減されているという。
また4月には野生で自生している野イチゴに実がつくことから、ミカンコミバエが寄生しないよう除去の必要性を挙げる農家もいる。
メス成虫の活動で果実に寄生し、幼虫から蛹=さなぎ=になると、羽化し次世代の成虫が誕生するが、オスを誘殺するためテックス板が投入されている。地上での設置のほか、ヘリコプターによる航空防除は4月下旬にも4度目が計画されており、こうした対策で5月に収穫期を迎える特産果樹スモモに規制が掛からず島外出荷の実現が期待されている。