徳之島 希少植物の移植着手

砂防ダム計画区域からの希少植物を移植する「徳之島虹の会」メンバーたち=1日、天城町

「連携・ルール化必要」の声も
県砂防ダム予定地

 【徳之島】県大島支庁徳之島事務所は1日、天城町松原の「松原川」上流域に今夏着工する砂防ダムと同関連道路建設などの計画区域の森林に自生する同島固有種など絶滅危惧植物の移植作業に着手した。県は、国立公園指定や世界自然遺産登録に向け公共事業の環境配慮指針やシステムなどを検討中。同策定に先駆け県砂防事業関連での移植例は同島初という。

 同徳之島事務所建設課によると同建設計画地は、特別養護老人ホーム「天寿園」=同町松原=の山手側(天城岳連山)を流れる「松原川」上流域。事業の必要性は「流域の荒廃が著しく、豪雨時に土石流が懸念され、直下に存在する天寿園(災害時要援護施設)に被害の恐れがある」などが理由。

 規模は、コンクリート製砂防ダム(除石管理型)が高さ13㍍、幅(堤頂長)79・5㍍。森林内には延長約500㍍(幅員4㍍)の工事用道路(完成後は管理用)も開削設置する。設計や地質調査などで2014年度に事業着手、16年度は国有林の買収や工事用道路の発注(7月ごろ)とダム本体を発注(10月ごろ)して18年度の完工を目指す。総事業費見込みは約4億円。

 改変に伴う河川・森林の希少動植物などへの影響調査は昨年7月と10月の2回、一般財団法人県環境技術協会が約10㌶を対象に実施したという。県条例や徳之島3町条例で保護されている同島固有種を含む絶滅危惧種2種の群落を確認していた。 

 採掘・移植作業には自然保護団体のNPO法人徳之島虹の会(行山武久理事長)が2日間の日程で協力。初日は会員7人が、足元の悪い急斜面で樹木につかまりながら、計約50株を大切に移植して、水を掛けるなどした。

 虹の会の行山理事長(71)は「非常に良いことで、事前に私たちに教えて頂ければ、今後も調査や移植に協力したい。事業主体の自治体や工事請負業者、自然保護グループが連携するなどルール化できれば、希少動植物の保護につながると思う」。

 徳之島事務所建設課の担当者も「チェックシートの策定・活用に先駆けて手探りの状態だが、県庁や環境省、NPOの方々とか相談をしながら進めているところ。(希少種を)チェックするにも詳しい方の協力が必要」などと話した。

 公共事業に伴う同島内での移植例は、国営かんがい排水事業(徳之島ダム)、県の危機管理防災行政無線塔(井之川岳)や山クビリ線災害復旧工事地区などに次ぐもの。県砂防関係は初という。