大やけど乗り越え古市さん講話

人は人に認められることで幸せを感じると講話した古市さん

「人を認めて幸せにして」
倫理法人会経営者セミナー 生き方ヒントも

 バイク事故で命を落としそうになるほどの大やけどを負い、容姿が大きく変貌するなどの不幸に見舞われたものの強い精神力で前向きに生き、全国での講演で命の大切さや出会いの素晴らしさを伝えているオープンハートの会会長の古市佳央さん(44)が12日早朝、奄美市名瀬であった奄美倫理法人会の経営者モーニングセミナーで講話した。テーマは「本当の倖せとは」。講演などで多くの人と出会い、感謝される中で自分が認められていると感じ、生きる活力をもらったという古市さんは、人は人に認められることで幸せを感じるとし、「僕たちは人を幸せにできる存在だということを知ってほしい。たくさんの人を“認めて”幸せにしてほしい」と訴えた。

 古市さんは高校1年の時にバイク事故で全身の41%にやけどを負った。皮膚移植手術を行うなどし一命を取り留めたものの容姿は変貌、指の関節に機能障がいも残った。移植手術は30回を超え、入院期間は通算3年。社会復帰後は、傷などをメイクでカバーするリハビリメイクの考案者、かづきれいこさんとの出会いをきっかけに講演活動を開始。現在は、障がい者と健常者の垣根をなくすことなどを目指している同会の運営のほか、東京都足立区西倫理法人会の幹事を務めている。

 事故直後の入院で、傷みなど激しい苦痛を伴う治療を受けたり、容姿が変貌してしまっているのではないかという不安を抱いていたりしていたことを話した。

 入院生活を通じて生きている意味を学ぶことができたという。入院中には元気だった患者が突然亡くなったり、見舞いに来ていた人たちが悲しむ姿を見た。そのため「人は生きていることで誰かを悲しませない」と思ったという。「僕たちは悲しみを与えないために生きなければならない。『当たり前の幸せ』を生きているだけで与えることができる」、「自分だけで生きていると勘違いしている人がたくさんいる」。

 社会復帰を果たしてからはその変貌した容姿から冷たい視線や偏見の目にさらされ、悔しい日々を過ごした。自動車販売の仕事を立ち上げ、仕事をする中で「外見はとても重要だが、外見がすべてでないことに気付いた」。誠意を持って仕事を頑張ると客が客を紹介してくれた。「僕の外見は一切関係なかった」。

 講演をするのはかづきさんが勧めたが、当初は生き恥をさらすようで拒んだ。だが勇気を持って講演に挑戦し、続けて行くと、たくさんの人から『生きていてくれてありがとう』と言われた。「事故で生き残ったことを後悔していたのに、話すたびに『ありがとう』をもらっていった」。

 ある講演で小学生に「タイムマシンがあったら戻りたいですか」と質問された。「当たり前じゃないですか」と答えるつもりだったが、その言葉はなぜか出てこず、「今の自分が大好きだから戻りません」と答えた。これまで事故で今の姿になった自分のことは嫌いだったが、その時に気持ちの変化に気付いた。講演を重ねる中で「今の自分を認めてもらった」ことが自分の気持ちを変えたとわかった。

 「人は自分の力では幸せになれない。必ず人の存在が必要になる。僕のように大きな障がいを得たり、とてもつらい経験をした人でも幸せになることができる」。

 「人が人を認めることには力がある。皆さんはたくさんの人を認めてほしい」と訴えた。

 人が幸せになるためには環境も大切とし、子どもの非行や育成環境などにも触れた。子どもは大人を見ているといい、「大人がしなければいけないのは人に感謝する姿を見せること。幸せな姿を見せること」と強調した。

 人の生き方について、「僕は幸せの価値観を低く設定している。僕はきょう生きていることが幸せ。幸せの価値観をどこに置くかによってその人の生き方は変わっていく」とアドバイスも。

 手術の輸血では何百人もの血をもらったといい、たくさんの人たちのおかげで生かされていることに気付いた時には、「感謝の気持ちがあふれ出てきた」という。血をもらった人にお礼を言いたいが言う術がない、もしかしたら嫌いな人からも血をもらったのかもしれない、そう思うと人を憎めなくなったといい、「この人とつながっているのかも」と博愛の気持ちを持って生きていると話した。