防衛省、奄美市で初の住民説明会

奄美市で初めて開催された陸自部隊配備に関する住民説明会。マイクを握り説明する九州防衛局の市川企画部長と、同席した朝山市長=左=

陸自配備 安全・環境配慮を強調
出席者からは賛否

 陸上自衛隊警備部隊の奄美大島への配備についての住民説明会が5日、奄美市名瀬の大熊公民館であった。朝山毅市長も同席のもと、防衛省の担当者が部隊配備の意義や規模、施設概要、環境面への配慮などについて説明し、配備への理解を求めた。奄美大島への部隊配備について、防衛省が島内で住民に対し説明会を行うのは今回が初。奄美市による住民説明も初となったが、質疑応答では参加者から部隊配備そのものに関する賛否も飛び交った。

 住民説明会の開催は奄美市側が防衛省に対し以前から要請しており、市側の主催として実施。大熊地区を中心に住民約170人が出席した。開催場所を大熊としたのは、「部隊配備の影響が一番大きい地域と考えられるため」(市総務部)。

 奄美市への陸自部隊配備は、2014年8月に当時の防衛副大臣が奄美市へ要請し、それを朝山市長が承諾。その後も着実に部隊配備の計画・事業が進む一方で、これまで同市での住民説明会は一度も開かれてこなかった。

 会の冒頭、このことを出席者から指摘された朝山市長は「確実に事業を執行するための予算がはっきり決まる前に、説明会をするのは国として無責任になり、市としても唐突すぎる。(一定程度)決まった上で時期をみて、今年4月頃に行う予定だったが、(熊本の)震災などの影響で私の責任において、きょうに至ったことをお許しいただきたい」などと述べた。また「国民一人一人の生命・財産を守ることは国の責務として当然のこと」と改めて部隊配備への理解の姿勢を示した。

 会では同省九州防衛局の市川道夫企画部長が住民の関心が高いと思われる質問を項目化し、それに沿う形で説明。訓練については駐屯地内の覆道射場で小銃等の射撃訓練をするが、厚さ20㌢のコンクリートで覆われ、弾が外に飛び出る危険はないと安全面を強調。国内演習場では地対空誘導弾や地対艦誘導弾の射撃訓練もしないと明言。弾薬貯蔵庫等の安全性もアピールした。

 警備部隊等の隊員用宿舎は奄美市に約110戸、瀬戸内町に約60~70戸を予定。一部は民間賃貸住宅の活用も考えられるとした。このほか駐屯地等の建設工事、駐屯地で消費する食料品や必要物資の調達等について、地元企業の受注機会確保に努めるとしたほか、奄美大島の駐屯地に配置する隊員の選考は、「地元出身者であることも考慮する」とした。

 参加した住民から防衛省への要望として「妻帯者の隊員を多く配備してほしい」、「この機会に大熊~有良・芦花部間の道路改修を」、「水質の保全など環境への影響をなくしてほしい」など意見も。

 防衛省側は「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づき、例えば自衛隊の大型車両の通行が増えたことで一般車両の通行が困難になるなどの障害がある場合には、道路改修工事等に対する助成もあり得る」「整備する駐屯地は法律・県条例で定める環境影響評価の対象事業と規模ではないが、昨年度から環境調査業務を行っており、駐屯地整備はその結果を踏まえて適正に進めていく」「排水について大熊地区の駐屯地では浄化槽を防衛省の方で設置し、環境基準等にのっとったきれいな水を流す」などと回答した。

 会終了後、朝山市長は「住民のみなさんから多くの質問が寄せられ、よく理解されていなかった面も含め、防衛省の方に一つ一つ丁寧に答えていただいた。これによりみなさんのご理解も進んだのではないか」と話した。

 同防衛局の市川部長は、「個人的な感触としては配備に納得していただいている方が多かったと感じた。温かく迎えていただけるのではないか」と語り、仮に今後も説明会等の要望があった場合については「できる限り対応したい」と述べた。

 防衛省によると、奄美市では奄美カントリークラブの土地に普通科を主体とした警備部隊と中距離地対空誘導弾の部隊約350人を19年3月までに配備する予定。15年度から環境調査、用地交渉・取得など進めており、今年度から実施設計、敷地造成工事など着手する計画。