故郷・与論の文化、後世に

故郷への想いをつづった文集を出版した川畑さん

『与論島誠景・雑抄』自費出版
元校長の川畑さん(与論島出身)

 【鹿児島】与論島出身で元特別支援学校長の川畑朝一さん(65)が、与論島で過ごした少年期の思い出や島唄、方言などをつづった文集『与論島誠景(じょうけい)・雑抄』と別冊『ゆんぬむぬがったい(与論の昔話)』を自費出版した。「故郷の文化を、後世に伝え、残したい」と出版に寄せた想いを語った。

 川畑さんは沖縄で生まれ、中学を卒業する15歳までを与論で過ごした。2005年、那間小に校長で赴任した際、「子供たちが島の方言をほとんど使っていない」ことにショックを受けた。38年ぶりに故郷に帰ってみると、子供たちだけでなく、親世代も与論方言=ユンヌフトゥバを使えなくなっている人が増えていると感じた。

 「このままではユンヌフトゥバを後世に伝える人がいなくなってしまう」と危機感を持った川畑さんは、毎週の全校朝会を方言でするなど、方言伝承活動に取り組んだ。以来、方言をはじめ、島に伝わる昔話、民謡、自身の体験した島の風習や遊びなどを、イラスト付きの文集にする作業を始めた。それらを1冊にまとめたのが本書だ。

 本書の制作と同時に、島に伝統的に伝わる蛇三味線作りにも取り組んだ。本書の第1、2部では蛇三線にまつわる歴史考察やエッセイ、制作方法などがつづられている。別冊は本書の中から昔話、蛇三線楽譜をピックアップした。全てを方言表記し、読者同士で創作話を書き込んだり、想像画を書き込めるような構成になっている。本書、別冊とも50冊ずつ制作し「島文化の継承活動の輪が広がるきっかけになれば」と川畑さん。一般販売はせず、川畑さんの知人や島興し活動などに取り組んでいる団体、教育機関などに配布する予定。問い合わせは電話099―244―2285まで。
(政純一郎)