津江三千子さん3回目個展

「作品の根底には奄美の原風景があります」と語る、津江さん=東京・銀座個展2

「奄美の生命力と自然の力を感じ取ってほしい」と作品に寄り添う津江さんと、ギャラリーを訪れた人たち

日本画18点展示「ささやくものたち2016」
奄美のパワー全開

【東京】奄美の自然とエネルギーを感じ取って――。奄美市名瀬出身の画家・津江三千子さん(67)の個展が、東京・銀座の「銀座幸伸ギャラリー」(中央区銀座7-7-1)で開かれている。心象風景などを中心に日本画18点を展示。折しも、奄美地方が台風13号の影響で強風域に入り、関東地方もあいにくの雨模様に。そんな中、ギャラリーを訪れた人たちは、津江さんの笑顔と幻想的で魂の鼓動が感じられる作品に魅了されていた。

2004年に第72回独立展入選、12年にはフランスの美術展覧会「サロン・ドートンヌ」入選を果たすなど、国内外での評価が高い、日本画家の津江さんが、本格的に絵に取り組んだのは、38歳のとき。下の子どもが幼稚園に通い始め時間ができたため「軽い気持ち」でスタートした。絵画教室に入り、その後、埼玉県展で入賞を重ねて、県芸術家協会員になった。

日本画を本格的に学ぶきっかけとなったのは、あるとき、古本屋で「平家納経」を手にしたこと。その、金箔=きんぱく=と銀箔による装飾の美しさ、そこに広がる世界観に強く引かれた。「装飾美を自分なりに表現したい」。そう思った津江さんは、53歳で武蔵野美術学園へ入学。日本画の基礎を1年間 、2年目からは日本画の研究室へ。計3年間、専門的な日本画の技法を学んだ。やがて、03年の第57回女流画家協会展入選。ほかに、ベルギー・オランダ展大賞、日・仏展優秀賞など、その才能を大きく花開かせている。

同ギャラリーで3回目となる今回の展示には、「ささやくものたち2016」と表題がつけられた。なかでも目を引くのが、完成までは半年間かかったという、縦162・1㌢、横260・6㌢の「朝ぼらけ」。一晩限りで花を散らす奄美大島を北限にする「サガリバナ」が、金、銀のほか、たくさんの色で描かれ、見ている者を原生林に誘う。生命のはかなさ、その魅惑的な香りも漂ってくるようだ。

また、「ささやき」と題した100号の作品は、生命力に満ちたガジュマルが多彩な色で力強く表現されている。そんな津江さんの作品の根底にあるのは、高校時代まで過ごした、奄美の原風景。「描く立場になって、あらためて奄美の森の精霊やエネルギーを実感しています」と故郷を振り返っている。

同ギャラリーでの個展は3回目。展覧会は、11日まで開催されている。時間は午前11時から午後6時まで(最終日は午後5時まで)。訪れた人に、作品を通じて奄美のパワーを発した津江さんは、個展が終わると同時に、海外の展覧会に備えて、奄美のエネルギーをキャンバスに込める。