環境研究総合推進費シンポ

奄美博物館で行われた「環境研究総合推進費シンポジウム2016」

奄美の森林 伐採量は増加
ポスター発表も

環境研究総合推進費シンポジウム2016@奄美博物館(国立研究開発法人・森林総合研究所主催)が28日、奄美市名瀬の奄美博物館であった。奄美の森林利用や国立公園、野生動物を取り巻く環境の変化などについて講演。地元の中高生らも参加し、動植物に関する研究やゴミ問題などに関するポスター発表などもあった。

同シンポジウムでは、同推進費「奄美・琉球における森林地帯の絶滅危惧・生物多様性保全に関する研究(研究代表者・正木隆氏)」の研究成果を地域や行政機関などに還元し、連携して研究プロジェクトを推進することが目的。長崎大学環境科学部の杉村乾さん、環境省奄美自然保護官事務所の岩本千鶴さん、森林総合研究所野生動物研究領域の亘悠哉さんがそれぞれ講演した。

「奄美の森林利用の過去と未来」について講演した杉村さんは、奄美の林業の歴史と背景を振り返り、野生生物の増減について調査結果を説明。2015年以降の森林伐採の現況として、大半は宇検村と大和村で行われていること、市町村有林と国有林は保護林と水原林を除いてほぼ伐採され尽くしたものの、輸入チップ財価の上昇、チップ工場の再開から伐採量は増加していることなどを示した。

林業と森林ツーリズム、希少種保全の共存に向け、「すべてにおいて優れた選択肢はない」とし、「広域的に長伐期施業(伐採林齢は80~100年)」と「短伐期施業(伐採林齢は約40年)+広域的な禁伐域」どちらに重心を置くべきかが課題などとした。

国立公園と世界自然遺産について語った岩本さんは国立公園と世界自然遺産それぞれの登録意味や役割、奄美の作業現状を説明した上で、今後の課題として▽希少動植物の保護▽外来種対策▽産業活動などとの調和▽良質かつ持続可能な利用・体験の提供▽地域社会の参加・協働による保全管理―などを掲げた。

奄美の動物たちを取り巻く環境変化について語った亘さんは、奄美のマングース防除事業が世界で注目されていることを紹介。その上で、「着実に減少しているマングース防除事業をどう維持するか。島の生き物を守り続けるためのノネコ問題や観光の適正利用が新たな課題」などとした。

各講演の後には、林野庁名瀬森林事務所の井川武史さんと奄美自然保護官事務所の鈴木祥之さんがそれぞれコメント。「貴重な奄美の森を守らせてもらっている。利用と保全の調整を図りながら、今後も各機関と協力し、守っていきたい」(井川さん)、「保全に大事なのは遺産地域の周辺に住む人。世界遺産登録後、すべての人が発展する仕組み作りは必要なので、地域のみなさんにも積極的に参加してほしい」(鈴木さん)などと語った。

このほか、会場では大島高校や龍北中学校、奄美猫部、奄美野鳥の会、奄美哺乳類研究会、奄美マングースバスターズによるポスター発表も行われた。