ウミガメ来る海岸目指して

屋仁集落の海岸でボランティア清掃を行っている朝沼さん(左)と熊本さん

漂着ゴミ 13年間ボランティア清掃
笠利町屋仁集落 朝沼さんと熊本さん

毎年ウミガメの上陸・産卵が見られる奄美市笠利町屋仁集落の海岸では週に2回ほど、同集落に暮らす朝沼悦郎さん(72)と熊本清一郎さん(69)が海岸清掃のボランティアを行っている。病気をきっかけに故郷に帰省したという二人。「出来る範囲で、出来ることを。ウミガメがまた産卵する海岸になってほしい」と、コツコツと作業している。

活動を始めたのは15年ほど前に帰省してきた朝沼さん。脳梗塞を患ったことをきっかけにふるさとである同集落に戻ってきたという。妻のノリ子さんは「右半身のまひと言語障害があり、しばらくは本人もずいぶん落ち込んでいた。ところが、12~3年前のある日、いきなりゴミ拾いを始めた。『(海岸が)きたない』と言いながら黙って黙々と作業して、結果的に体を動かしてリハビリになったり、集落の人がたくさん話しかけてくれることで言葉もだいぶ出てくるようになった」と振り返る。

その後、5年前に同じく脳梗塞を患ったことをきっかけに帰省した熊本さんが作業に参加。いまでは病院でのリハビリがない週2回、一緒に作業しているという。

漂着するゴミは浮きやペットボトルなどのほか、漁の網、巨大な流木など多岐にわたる。基本は拾えるゴミを集めることが中心だが、ときには身近な人が協力してくれ、重機などを用いてゴミを撤去してもらうこともあったそうだ。集めたゴミは定期的に奄美市が回収しているという。

5年前、熊本さんが参加する前はほとんど朝沼さんが一人で作業をしていた。熊本さんは「ハングル文字のペットボトルやガラス片など毎日多くのゴミが流れ着くので、5年前は山のように積みあがっていたのを覚えている。昔はもっときれいな海岸だった。昔のイメージが忘れられない。都会に出ていた分より島への愛着があるのかもしれない」と振り返る。

同集落の海岸で上陸・産卵するウミガメを長年観察してきた屋仁小の児童らが先月、第51回「全国野生生物保護実績発表大会」(環境省、公益財団法人日本鳥類保護連盟主催)で環境大臣賞を受賞している。今年はウミガメの産卵がなかったものの、熊本さんらは「子どもたちも保護活動をがんばっているので、また産卵してくれるようになれば。掃除はあくまでも我々が出来る範囲のことをしているだけ。気楽に、リハビリも兼ねながら続けていけたら」などと話した。