城南海さんインタビュー

「THEカラオケ★バトル(テレビ東京系)」で獲得した数々のトロフィーの前で輝く笑顔を見せる城南海さん=ポニーキャニオン提供

咲かせます〝月下美人〟を
奄美の風と愛情で…

 その伸びやかで、人を包み込むような歌声はたちまち聴く人をとりこにする。奄美生まれの〝きゅらむん〟城南海さんだ。あどけない少女がオーディションのステージに立って、10年が過ぎた。奄美の大自然と、島の人たちの愛情に育まれた彼女は、瞳に映る全てのものから力を得て学生生活を続けながら歌手の道を歩んだ。やがてテレビ東京「THEカラオケ★バトル」で10冠に輝くなど、実績を残しながら奇跡の声と笑顔で人々を魅了し続けている。4枚目のオリジナルアルバム「月下美人」を携え、晩秋から師走の日本列島を駆け巡る城さんに、新年を迎える胸のうちを伺った。

 四季に応じたツアーも開催、日本各地を精力的に動き回った2016年。満足のいく年となったようだ。

 「新しいチャレンジがたくさんあった年。目標にしていた季節ごとのツアーもできました。特に奄美での『ウタアシビ2016秋』は、とても思い出深いものとなりましたね。初のファンクラブツアーも行い、参加者たちと『ならびや』でウタアシビしたり、奄美を堪能してもらえました。夏はミュージカルにも初挑戦。とにかく動き回った一年、そんな印象があります。点数を付けたら、98・569。「THEカラオケ★バトル」では決勝戦に進めます(笑い)。これまで番組では?曲歌わせてもらい、平均?点ですから、きっとお正月のころは、さまざまな部分を補えて100点満点でしょう(笑い)。『THEカラオケ★バトル』が縁となって、(宮本)亜門さんの『狸御殿』へ出演させてもらえたのは、大きな収穫でした。3カ月間みんなで一緒にいて職人さんやいろんなプロの方々との現場は楽しかったなあ。白木蓮という大役もいただき、あちこちで〝良かったね〟と声を掛けてもらったのは、うれしかったですね。生のステージで1カ月間毎日本番というのはありませんから、体も壊せないし、責任感も必要。いい勉強をさせてもらいました」

 名演出家に〝神から与えられた声、国を超えてほしい〟とまで言わせた、才能は初のミュージカルを経てさらに開花。大きな果実ももたらすことに

 「ええ舞台を終えてすぐにレコーディング。そのせいか、亜門さんが指導された自然を感じる、景色が見える演技というのが、そのまま歌にも反映されている部分があります。和をテーマにしたアルバム『月下美人』を11月16日にリリースしましたが、その中にある『晩秋』には、今までの私にはなかった力強さが出ています。その力強さの源になったのはどっしりとした低音の響き、愛を武器に相手を諭す白木蓮に通じるものがあるのです。何事にも動じない魂と何でも包み込む母性愛でしょうか。10年はとても早かったです。高校時代にスカウトされて、その後上京して大学に通わせていただきながらライブ、レコーディングなど活動。常に人と関わっている立場なので、自分の意見をしっかりと伝えていくことが大事だと知らされて、それなりに大人になりました。音楽をやっていなければ会えない人たちに色んな所で共演させてもらい、とても大きな経験をしましたね。みなさん音楽に対して真剣に向き合っている、だからこそ長く支持されるんです。そんな姿にも影響されて、成長できたかな(笑い)と」 

 今回のアルバムには自ら作詞作曲に携わった2曲が収録されている。そのうちの『七草の詩』は、彼女の母方の祖母を想う詩が独学で修得したグイン(こぶし)との旋律を構成、奄美の風景を感じられる。

 「ストーリー性のある、ポップであったり、母性のほかに力強かったり、新たな城南海を感じられるアルバムとなっています。『七草の詩』は、徳之島に住んでいた祖母を想った歌。2012年11月16日のライブのために作った曲なので、家のベランダから月を眺めているときにメロディーが先に、その後、詩をつけました。実はその曲を披露する直前に祖母が亡くなってしまったのですが、同じ11月16日にアルバムが出たのは、偶然。とても不思議でしょう」

 大好きだった祖母への思慕にあふれる詩には、秋の七草がちりばめられている。〝思い草は咲き乱れて月明かりを浴び薄はのびゆく〟。詩の中で、女郎花(おみなえし)のみが『思い草』と別称で表現され、作詩の才能と高さを感じさせる。

 「それは、思い草の方がメロディーに乗せやすく、祖母を〝想う〟ということがより伝わるかなと思ったから。祖母は月にいるイメージです。海の上に月が浮かんでいて、その月に祖母がいます」

 島を離れて長く暮らすうち、改めて感じる奄美が城さんの中にも存在するらしい。

 「私の中に奄美があり、そしてシマ唄が根底にあるのは変わりません。あと、声が大きい(笑い)とよく言われます。きっと大自然の中で生活したからでしょう。島人(しまんちゅ)って、大声の人多くないですか? 東京で仕事をしていてあらためて知ったこともあります。古仁屋出身の人が東京の仕事をやめてまで、地元に青年団をするため帰るように、熱い人たちがいっぱいいるのです。昨年はお正月に帰れたけれど、今年はどうでしょうか。ほぼ仕事でしか戻れないけれど、帰ったら父が作るエビやカニのスープを食べたいな。私も島を盛り上げられるようライブでもっと奄美の風を吹かせるつもりです」

 あの徳光和夫さんに〝MCの才能がある〟と言わしめた城さんのステージさばきは見事だ。とにかく面白いし、良く笑う。テレビ画面から伝わるものとは違った姿に出会える。可能なら魅力的な姿を見つけにライブへ足を運ぶことをお薦めしたい。その演出される世界には、一夜限りの花や彼岸花、秋の七草が揺れている。奄美の風と、彼女の愛と情熱で…。
    (高田賢一)