八月踊り考える討論会

八月踊りの継承などについて討論したトークセッション

踊りに触れる環境創出を
歴史・背景、特徴の解説も
次世代への継承討議

 八月踊りを考えるトークセッション(県、奄美市など主催)が21日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。八月踊りの研究者を招き、歴史や背景、集落ごとの踊りの違いなどについて解説したほか、八月踊りの継承活動などに取り組む地元住民をパネラーに加え、次世代への伝承について事例を挙げながら意見交換。唄、太鼓、踊りの三者一体を基本に、若い世代から楽しみながら踊りに触れる環境創出に理解を深めた。

 イベントは昨年実施された国民文化祭のポスト事業として、明治維新150周年を見据えた「かごしま文化維新プロジェクトACT」の一環。2016年度から3カ年度に渡って展開しており、今年度は奄美地域における芸能や文化に焦点を当てた事業などを実施する。

 講師を務めた元鹿児島純心短大教授の小川学夫さんは、八月踊りについて「豊作や各戸安寧を祈願して集落の各家を回ることに大きな目的があった」と持論を展開。特徴として唄の掛け合いや地域によって唄のテンポが変化するなどの違いを紹介した。

 小川さんは島民にとっての八月踊りの位置づけとして、「島の重要な財産であり、自分のシマ(集落)の踊りが『奄美一』と思っている」と分析。同市笠利町佐仁集落八月踊り保存会の前田和郎会長は、「心のよりどころであり、集落の宝物」、同市名瀬浦上地区青年団の永田隆博副団長は「自分たちが楽しみ、多世代と交流できるもの」と意義を強調した。

 小川さんは継承における課題として歌詞を見たり、テープやCDで八月踊りを進行する事例を示し、「全国の芸能の事例をみても、芸能の衰退はまずは歌から始まっている」と述べ、唄を残す取り組みの必要性を指摘。その一方、「全てを順守しようと思えば、負担になることもある。楽しんでやることが鉄則だ」とも訴えた。

 前田会長は自主的に組織を立ち上げ、子どもたちだけで八月踊りを実践している事例を紹介。永田さんも幼少期の経験を振り返り、「子どもの頃に踊りに触れることが大切」と話した。

 同プロジェクトの一環として22日は、龍郷町戸口の肥後染色で泥染めによる舞台美術づくり体験を行う。