奄美市で初の徘徊模擬訓練

朝仁町のほぼ一帯をフィールドとして行われた「はいかい模擬訓練」

朝仁町一帯をフィールドに
認知症の見守り地域で

 奄美市主催の「認知症はいかい(徘徊)模擬訓練」が19日、同市朝仁町一帯で開催された。同町内会を中心に下方地区の住民や行政関係者など約50人が参加。同町内一帯を訓練フィールドとして、認知症により、徘徊する人の気持ちに配慮した優しい声かけや、見守りのための訓練を実施。誰もが安心して暮らせる優しい地域づくりのあり方も考えた。

 同訓練は奄美大島では初めて。市高齢者福祉課によると、認知症カフェの取り組みや周辺の各学校・団体等における認知症サポーター養成講座の積極的な受講など、朝仁町は市内でも特に認知症や認知症患者に対する住民理解が広く、模擬訓練を行う素地が整っていたことから同町内での開催となった。

 徘徊は認知症患者本人の命の危険はもちろん、在宅支援で家族を最も悩ます行動の一つ。参加者ははじめに朝仁児童館で、認知症や、徘徊行動の原因、声かけの際の心得などについて学習。その後は町内一帯を訓練フィールドとして、2~3人のグループに分かれて周囲を歩き回り、「徘徊する認知症の高齢者役」の人を見つけて声かけの訓練を行った。

 その後のワークショップで、認知症役の人からは「複数で急に進行方向に立たれると、気分を害する人もいるかもしれない」「早口ではなく、ゆっくり話してもらいたい」「島口(方言)で声をかけられると安心感がある」などの意見。一方、声かけを行った参加者からは「驚かせないように気をつけて声をかけるのは意外と難しい」「机上の勉強だけでは役に立たないと痛感した。今回のような訓練をもっと回数をこなし、他の地域でもやった方がいい」「見知らぬ人への声かけは勇気がいる」「訓練でなく実際の場面であればもっと大変かもしれない」などが挙がり、模擬訓練を通じて多くの気づき・発見があったようだ。

 参加した同町の屋村賢良さん(64)は「こうした徘徊行動などへの対応を実際に経験する取り組みも大切だが、その一段前として、普段からの地域住民同士のコミュニケーション(声かけしやすい環境)づくりが重要だと感じた」と話していた。