第2回ネコシンポ、各講師からネコ問題の講演が行われた
外来ネコ問題研究会(山田文雄会長)は28日、シンポジウム「奄美の自然と〝島んちゅ〟の未来!!みんなで考えよう!ネコ問題とクロウサギ、そして世界自然遺産のこと!!」(全5回)の第2回「奄美大島の現状と課題、そしてその展望」を奄美市名瀬のAiAiひろばで開催した。報道でノネコがアマミノクロウサギを襲う動画が公開されたことで、住民の関心も高く会場には約80人が参加した。シンポでは、講師陣から奄美大島のノネコ問題などについての報告・意見が出され、参加者は世界自然遺産登録に向けて避けては通れない課題を認識した。
シンポは、公益財団法人自然保護助成基金(PNF)の助成事業を受けて行われたもの。シンポの冒頭に奄美市の島袋修環境対策課長は、ノネコの発生源が飼い猫の外での放し飼いであるとし、「世界自然遺産実現にノネコ問題が最重要課題」とし、「行政も飼い猫の適正飼養の指導とTNRなどの取り組みを続けていく」と述べた。
シンポでは、報道されたアマミノクロウサギ幼獣の捕食記録も放映。参加者はショックを隠せない様子で、講師の報告を聞いていた。
奄美野生動物研究所の塩野崎和美さんは、奄美大島のノネコの数を600~1200頭と試算した。生息密度(1平方㌔㍍あたりの生息数)は1~2/平方㌔㍍と発表。ノネコの食性を分析して、奄美大島のノネコは徳之島と比較して鳥類の捕食が少ない特徴があるという。塩野崎さんは、「ノネコが1頭いたら1年間で44頭のクロウサギが襲われる」とし、クロウサギの生息域に1頭もノネコはいてはならないと訴えた。
沖縄の西表島でノネコ問題に取り組んだ長嶺隆さん(NPO法人どうぶつたちの病院沖縄理事長)は、ノネコ問題を飼い主の意識の問題であるとし適正飼養を行えば解決できると提言した。西表島もノネコがヤンバルクイナを捕食し、絶滅が危惧されたが現在は実効性のある猫飼養条例を制定してノネコをゼロにできたと報告。長嶺さんは自身の経験からノネコ問題で行政が取り組むTNRに対して、時間稼ぎにはなるが捕食は回避できないとして、クロウサギの生息地での捕獲排除の早急な対応を訴えた。また捕獲されたネコについても限界があるとし、全てのネコは救えず殺処分は避けられないだろうとした。
ゆいの島どうぶつ病院の伊藤圭子院長は、猫の適正飼育について外での放し飼いがトキソプラズマ症(人にもうつり、妊娠中の女性の死流産もある)などの伝染病を引き起こすとして警鐘を鳴らした。伊藤院長によるとTNR時に調査したデータで、野良猫の約12%がトキソプラズマ症に感染しているという。「世界自然遺産に向けて、がっかりさせるかどうかは島に住む人の意識が問われる」とし、猫の適正飼養を訴えた。
また27日に、宇検村で保護され同病院に運び込まれたクロウサギの治療事例も報告。ノネコに襲われたと思われる傷が複数確認されており、伊藤院長はクロウサギがけがで苦しんでいる映像を説明して「何とかみんなでしませんか」と語った。
神奈川大学法学部の諸坂左利准教授は、法学者の立場からネコ問題を考察。奄美大島のノネコ問題について、今後世界自然遺産が実現して観光客が増加したら、観光客による問題も出て来るとし受益者負担として入島税を提案した。また猫の放し飼いが「口蹄疫」を拡散させるリスクがあるとした。
各講演の終了後にパネルディスカッションが行われ、アンケートで集めた質問や会場からの質問などに各講師の回答があった。山田会長は閉会に際して、シンポジウムの盛況に奄美ネコ問題ネットワーク(ACN)の協力に感謝し、会場に来た人にはネコ問題を理解してもらったが「会場に来ない人に、どう伝えるかが今後の課題である」と締めくくった。同研究会は、今後も地元のネコ問題に取り組む人を参加させてのシンポジウムを開催するという。